情シスアウトソーシング導入事例 ― 製造業50名規模のひとり情シスが限界を迎えるまでと、その後

情シスのアウトソーシングに興味はあるが、「実際にどんな会社が、どんな経緯で導入して、どうなったのか」を知りたい——そんな声をよく耳にします。

本記事では、複数の支援実績をもとに構成した典型的なケーススタディとして、従業員50名規模の製造業企業が情シスアウトソーシングを導入するまでの経緯と成果を紹介します。

※本記事は複数の実例を組み合わせた再構成事例です。特定の企業の事例ではありません。

企業プロフィール

項目内容
業種精密部品の製造業
従業員数約50名(本社+工場)
IT環境Microsoft 365 Business Basic、オンプレミスのファイルサーバー、業務用PC約40台
情シス体制総務部の1名が兼任(いわゆる「ひとり情シス」)
IT予算月額約30万円(ライセンス費用+保守費用込み)

課題:ひとり情シスが限界を迎えた

総務課のAさんは、入社以来「パソコンに詳しい」という理由で社内のIT全般を任されてきました。PCのセットアップ、プリンターのトラブル対応、ネットワーク障害の調査、Microsoft 365のアカウント管理、ファイルサーバーのバックアップ確認——本来の総務業務に加えて、これらすべてを1人で担当していました。

転機は、以下の3つの出来事が重なったタイミングでした。

ランサムウェアの未遂事件。 従業員の1人がフィッシングメールの添付ファイルを開き、PCが不審な挙動を示しました。幸い被害は軽微でしたが、Aさんは初動対応に丸2日を費やし、その間すべてのIT業務が停止。経営者はこの事件で初めてセキュリティリスクを実感しました。

取引先からのセキュリティチェックシート。 主要取引先の大手メーカーから、サプライチェーンセキュリティの一環としてセキュリティ対策状況の回答を求められました。MFA(多要素認証)の導入状況、バックアップ体制、インシデント対応手順など、Aさんが1人で対応するには荷が重い内容でした。

Windows 10のサポート終了への対応。 社内PCの約半数がWindows 10のまま残っており、Windows 11への移行計画を策定する必要がありました。40台のPCのスペック確認、移行スケジュールの策定、キッティング作業のすべてをAさん1人で行うのは現実的ではありませんでした。

検討:採用か、アウトソーシングか

経営者との協議の結果、まずIT専任者の採用を検討しましたが、以下の理由でアウトソーシングに方針転換しました。

採用の難しさ。 地方の製造業にITエンジニアを呼ぶハードルは高く、人材紹介会社に依頼しても3ヶ月以上マッチングがつかない状態でした。

コスト面。 IT専任者を正社員で採用すると、年間で500万円〜600万円の人件費が必要です。一方、アウトソーシングであれば月額20万円〜35万円で開始でき、必要に応じてスケールできます。

スキルの多様性。 ひとり情シスの場合、1人のスキルセットに依存します。アウトソーシングであれば、ネットワーク、セキュリティ、クラウド、PCサポートなど、複数の専門家のスキルを活用できます。

導入:最初の3ヶ月でやったこと

アウトソーシング開始後、最初の3ヶ月で以下を実施しました。

月1:現状把握と棚卸し(IT資産の可視化)

まず社内のIT環境を棚卸しし、全体像を把握しました。これまでAさんの頭の中だけにあった情報を、ドキュメントとして可視化する作業です。

実施内容は、IT資産台帳の作成(PC、サーバー、ネットワーク機器、ソフトウェアライセンスの一覧化)、ネットワーク構成図の作成、Microsoft 365の設定状況の確認(MFA未設定、退職者アカウントの放置等を発見)、バックアップ体制の確認と改善策の策定です。

この段階で、退職済み社員のMicrosoft 365アカウントが5つ残っていること、MFAが全社的に未導入であること、ファイルサーバーのバックアップが3ヶ月前から失敗していたことが判明しました。

月2:セキュリティの緊急対応

棚卸しで発見されたリスクへの対処を優先的に実施しました。

退職者アカウントの無効化とライセンス回収(月額約¥5,000×5=¥25,000のコスト削減)、Microsoft 365のMFA全社導入(条件付きアクセスの設定含む)、ファイルサーバーのバックアップ復旧と監視設定、Windows Defenderの設定確認と更新が主な実施内容です。

月3:運用体制の構築とヘルプデスク移管

Aさんが担当していたIT問い合わせ対応を、アウトソーシング先のヘルプデスクに段階的に移管しました。

問い合わせフローの整備(Teamsチャネルでの受付→チケット管理)、よくある問い合わせのナレッジベース作成、Aさんへの引き継ぎ(Aさんは窓口から卒業し、総務業務に集中)、月次レポートの提供開始(対応件数、対応時間、未解決案件の可視化)を実施しました。

成果:6ヶ月後の変化

定量的な成果

指標導入前導入6ヶ月後
IT関連の問い合わせ対応時間/月Aさんが約40時間Aさんは0時間(外注先が対応)
MFA導入率0%100%
未処理の退職者アカウント5件0件
バックアップ成功率不明(確認していなかった)100%(監視付き)
IT関連コスト(月額)約30万円 + Aさんの人件費按分約50万円(アウトソーシング費込み)

IT関連コストの月額は増加していますが、Aさんが総務業務に集中できるようになったことで、採用事務や労務管理の品質が向上。さらに、セキュリティ体制の整備により取引先からのチェックシートにも対応でき、取引継続のリスクが解消されました。

定性的な成果

Aさんの負荷が劇的に軽減。 「PCが動かない」という電話で本来の業務を中断する必要がなくなり、総務としてのパフォーマンスが向上しました。

経営者のIT投資に対する理解が深まった。 月次レポートにより、社内のIT課題と対応状況が可視化され、経営者がIT投資の意思決定をしやすくなりました。

従業員のIT問い合わせ満足度が向上。 専門のヘルプデスクが対応することで、「Aさんが忙しくて聞けない」という状況がなくなり、問い合わせの応答時間も短縮されました。

この事例から学べるポイント

アウトソーシングの前にまず「可視化」。 IT環境の棚卸しと可視化が最初のステップです。何があるかわからない状態では、何を任せるかも決められません。

セキュリティの「穴」は早期に塞ぐ。 退職者アカウントの放置、MFA未導入、バックアップ失敗といった問題は、アウトソーシング開始直後の棚卸しで高確率で発見されます。

完全外注ではなく社内窓口も残す。 この事例ではAさんが社内のIT窓口として残りつつ、実際の技術対応をアウトソーシング先に委託する体制にしました。社内事情を理解する窓口がいることで、外注先とのコミュニケーションがスムーズになります。

「うちの会社でもアウトソーシングを検討したい」という方は、まず情シスアウトソーシングの費用相場と選び方をご覧ください。具体的なご相談はお問い合わせよりお気軽にどうぞ。

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