シャドーITが起きる原因と対策 ― 社員が勝手にSaaSを契約する問題にどう対処するか

営業部がいつの間にかファイル共有サービスを契約していた。マーケティング部が勝手にデザインツールのアカウントを作っていた ― いわゆる「シャドーIT」は、中小企業で非常に多く見られる現象です。

本記事では、シャドーITが起きる本質的な原因を分析し、「禁止」ではなく「管理可能な状態に持ち込む」ための対策を解説します。

シャドーITの実態

一般的な中小企業(従業員100名程度)で実際に使われているSaaSの数は、情シスが把握している数の3〜5倍と言われています。無料プランや個人のクレジットカードで契約されたサービスは、IT部門の管理台帳に載っていません。

なぜシャドーITが起きるのか

原因1: 正規のIT申請プロセスが遅い・面倒

「新しいツールの導入に2週間の稟議が必要」「情シスに相談しても『セキュリティ上の理由で不可』と言われるだけ」― 現場にとって正規のプロセスがハードルになっている場合、手っ取り早く自分で契約してしまいます。

原因2: 業務に必要なツールが提供されていない

会社が提供するITツールが現場の業務ニーズに合っていない場合、社員は自力で解決しようとします。特にデザイン、マーケティング、プロジェクト管理などの領域で顕著です。

原因3: 情シスのリソース不足

そもそも情シスに「新しいツールの評価・導入」に割くリソースがなく、問い合わせに対応できないケースもあります。ひとり情シスの状態では、現場の要望に応えるのは物理的に困難です。

「禁止」が逆効果になる理由

「会社が認めていないSaaSは使用禁止」と通達しても、シャドーITはなくなりません。むしろ、使っていることを隠すようになり、リスクが地下に潜るだけです。

必要なのは「禁止」ではなく、「安全に使える仕組み」を作ることです。

現実的な対策

1. SaaS台帳を作成する

まず現状を把握します。全部門に対してアンケートやヒアリングを行い、使用しているSaaSを洗い出します。合わせて、ネットワークのDNSログやプロキシログからアクセス先のドメインを分析し、把握漏れを補完します。

2. SaaSの承認プロセスを簡素化する

新しいSaaSの導入申請を「1週間以内に回答する」と明示し、申請フォームもシンプルにします。「禁止」ではなく「すぐに対応してくれる」という信頼を作ることで、正規ルートの利用を促進します。

3. 会社契約の標準ツールセットを整備する

業務カテゴリ(コミュニケーション、ファイル共有、プロジェクト管理、デザイン等)ごとに、会社が推奨するSaaSを選定し、法人契約で提供します。法人契約であれば、SSO連携、管理者コンソール、データの保持ポリシーが適用でき、セキュリティリスクが大幅に低減します。

4. SSO(シングルサインオン)でアクセスを一元化する

Entra IDやGoogle WorkspaceのSSO機能を使い、承認済みのSaaSにのみSSOでアクセスできる環境を構築します。未承認のSaaSはSSOの対象外となるため、自然に利用が抑制されます。

5. 定期的なSaaS棚卸しを習慣化する

四半期に1回、SaaS台帳の更新と不要サービスの棚卸しを行います。利用されていないサービスの契約を解除することで、コスト最適化にもつながります。

シャドーITのリスク

シャドーITは「便利だから」で済む問題ではありません。会社が管理していないサービスに業務データが保存されると、退職時のデータ回収が困難になり、個人情報保護法の安全管理措置の義務を果たせなくなり、セキュリティインシデント発生時に影響範囲を特定できないといった深刻な問題を引き起こします。

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