中小企業のVPN選定ガイド ― 拠点間接続・リモートアクセスの最適解

「VPNをどうすればいいか」は、中小企業のIT担当者が最も悩むテーマの一つです。コロナ禍以降のリモートワーク定着、複数拠点の接続、クラウドサービスの利用拡大により、従来のVPN構成では対応しきれないケースが増えています。

本記事では、中小企業がVPNを選定する際の判断基準を、用途別に解説します。

VPNの主な種類

IPsec VPN(拠点間接続向け)

本社と支店など、拠点間のネットワークを常時接続する用途に使われます。ルーター同士を直接つなぐため、通信の安定性と速度に優れます。ただし、ルーターの設定が複雑で、拠点が増えるほど管理が煩雑になります。

SSL-VPN(リモートアクセス向け)

在宅勤務や出張先から社内ネットワークにアクセスする用途で最も多く使われています。Webブラウザや専用クライアントソフトから接続でき、導入が比較的容易です。FortiGate、SonicWall、YAMAHAなどのUTM/VPNアプライアンスに内蔵されているケースが多いです。

クラウドVPN / SD-WAN

クラウド上にVPNゲートウェイを構築するサービスです。物理的なVPN装置が不要で、拠点やリモートユーザーの追加が柔軟に行えます。Cisco Meraki、Prisma Access、Cloudflare Accessなどが代表的です。

ZTNA(ゼロトラストネットワークアクセス)

VPNの代替として注目されている方式です。ユーザーとデバイスの認証に基づき、個別のアプリケーションへのアクセスのみを許可します。「ネットワーク全体へのアクセスを許可する」従来のVPNとは根本的に異なる考え方です。

用途別の選定ガイド

拠点間接続(本社⇔支店)

拠点数が2〜3箇所で、オンプレミスのサーバーへの常時接続が必要な場合は、IPsec VPNが最もシンプルです。拠点数が多い、または今後増える予定がある場合は、SD-WANの導入を検討しましょう。

リモートアクセス(在宅勤務)

業務システムがほぼクラウド(Microsoft 365、SaaS等)に移行している場合、VPNは必須ではありません。Entra IDとConditionアクセスポリシーで、デバイスとユーザーの認証に基づくアクセス制御(ZTNA的アプローチ)が可能です。

オンプレミスのサーバーへのアクセスが必要な場合は、SSL-VPNが現実的な選択肢です。

クラウド中心の環境

業務のほとんどがSaaS上で完結する企業は、VPNを廃止してZTNAに移行するのが中長期的な方向性です。VPN装置の管理負荷とセキュリティリスク(ファームウェアの脆弱性)から解放されます。

VPN運用のセキュリティ注意点

VPN装置の脆弱性を悪用した攻撃は、ランサムウェアの主要な侵入経路です。VPN装置を運用する場合は、ファームウェアの即時アップデート、初期パスワードの変更、不要なポートの閉塞、多要素認証の有効化を必ず実施してください。

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