IT担当を採用するか、外注するか ― 中小企業のコスト比較シミュレーション
「IT担当者を採用すべきか、外注すべきか」
この問いは、中小企業の経営者がIT体制を考える際に必ず直面するテーマです。どちらが正解かは会社の状況によって異なりますが、判断材料となるコストとリスクの比較は客観的に整理できます。
本記事では、従業員30〜100名規模の中小企業を想定し、IT担当者の採用とアウトソーシングを「コスト」「リスク」「柔軟性」の3軸で比較します。
コスト比較:3年間のトータルコスト
正社員採用の場合
IT担当者を1名、正社員として採用する場合の3年間のコストを試算します。
| 項目 | 初年度 | 2年目 | 3年目 |
|---|---|---|---|
| 年収(基本給+賞与) | 500万円 | 510万円 | 520万円 |
| 社会保険料(会社負担分、約15%) | 75万円 | 77万円 | 78万円 |
| 採用費用(人材紹介手数料、年収の30%) | 150万円 | ― | ― |
| 教育・研修費 | 30万円 | 20万円 | 20万円 |
| 福利厚生・交通費 | 30万円 | 30万円 | 30万円 |
| 年間合計 | 785万円 | 637万円 | 648万円 |
3年間合計:約2,070万円
ただし、これはIT担当者が3年間在籍し続けた場合の試算です。IT人材の平均離職率は他の職種より高く、1〜2年で転職するケースも少なくありません。再採用が必要になれば、採用費用が再度発生します。
アウトソーシングの場合
IT運用代行サービスを利用する場合の3年間のコストを試算します。
| プラン | 月額 | 年間 | 3年間合計 |
|---|---|---|---|
| ヘルプデスク+基本運用 | 15万円 | 180万円 | 540万円 |
| ヘルプデスク+セキュリティ+IT相談 | 25万円 | 300万円 | 900万円 |
| 包括的IT運用(ヘルプデスク+セキュリティ+月次コンサル) | 35万円 | 420万円 | 1,260万円 |
最も充実したプランでも、正社員採用より約800万円安くなります。
比較まとめ
| 項目 | 正社員採用 | アウトソーシング |
|---|---|---|
| 3年間のコスト | 約2,070万円 | 540〜1,260万円 |
| 離職リスク | あり(再採用コスト発生) | なし |
| 専門性 | 1名分のスキルに依存 | 複数の専門家チーム |
| 柔軟性 | 固定費(増減しにくい) | 変動費(月単位で調整可) |
リスク比較
正社員採用のリスク
離職リスク。 IT人材の転職市場は活況で、中小企業からの転職は特に起こりやすいです。入社半年で辞められた場合、採用費用150万円と教育投資がすべて無駄になります。
スキルのミスマッチ。 面接では優秀に見えても、実際に入社してみるとスキルが不足していた、というケースは珍しくありません。特に中小企業の情シスは幅広いスキルが求められるため、すべてをカバーできる人材を見つけるのは困難です。
属人化リスク。 正社員を1名採用しても、その1名に依存する「ひとり情シス」の状態は変わりません。属人化の解消にはなりません。
アウトソーシングのリスク
社内事情の理解に時間がかかる。 外部の専門家が社内のITルールや業務フローを理解するまでには、一定の立ち上がり期間が必要です。
コミュニケーションコスト。 社内に常駐するわけではないため、緊急時の対応スピードが内製より劣る可能性があります。ただし、チャット・電話で即時対応できる体制を整えている業者も多いです。
ベンダーロックイン。 特定の業者に依存しすぎると、業者の変更が難しくなる場合があります。ドキュメント整備を契約に含め、引き継ぎ可能な状態を維持することが重要です。
どちらを選ぶべきか:判断フレームワーク
正社員採用が向いているケース
ITが事業のコア。 ソフトウェア開発やテクノロジーサービスが事業の中心である場合、ITの知見を社内に蓄積する必要があります。
社員数が200名以上。 ヘルプデスクの問い合わせ件数やプロジェクトの規模が大きくなると、外注よりも内製の方がコスト効率が良くなるケースがあります。
機密性が極めて高い。 防衛や医療など、外部にIT運用を委託すること自体が難しい業界もあります。
アウトソーシングが向いているケース
社員数が30〜150名。 この規模では、正社員1名のフルタイムの稼働は過剰になりがちです。必要な分だけ外注する方がコスト効率が良いです。
ITは事業のインフラ。 ITが事業の中心ではなく、安定して動いていればよい場合、外部の専門家に任せるのが合理的です。
IT担当者の採用が難しい。 地方や特定の業界では、IT人材の採用が極めて困難です。
ハイブリッドモデル
実は、最も多くの中小企業にフィットするのは「内製+外注」のハイブリッドモデルです。
社内には1名のIT担当者(または兼任者)を置き、社内調整やベンダーコントロールを担当してもらう。ヘルプデスク、セキュリティ監視、プロジェクト支援など、専門性が必要な業務や負荷が高い業務は外注する。この役割分担により、コストを抑えつつ属人化リスクも軽減できます。
まとめ
IT担当の採用と外注は、二者択一ではなく、自社の規模・業種・IT課題に応じて最適な組み合わせを選ぶものです。
コスト面では、従業員100名以下の中小企業であればアウトソーシングの方が経済合理性が高いケースがほとんどです。ただし、単純なコスト比較だけでなく、離職リスク、属人化リスク、専門性の幅も含めて総合的に判断してください。
まずは自社のIT業務を棚卸しし、「社内でやるべき業務」と「外部に任せられる業務」を整理することから始めてみてはいかがでしょうか。
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