Microsoft 365を「ただのメール」から脱却させた中小企業3社の活用事例

Microsoft 365を導入している中小企業は多いものの、実際に使っている機能は「メール(Outlook)とWord・Excelだけ」というケースが大半です。Teams、SharePoint、Power Automate、Planner、Formsといった機能は契約に含まれているのに活用されず、月額料金の大部分が「眠ったまま」になっています。

本記事では、Microsoft 365の活用範囲を広げて実際に業務改善を実現した3社の事例を紹介します。

事例1:ファイルサーバー廃止でリモートワーク対応(設計事務所・15名)

課題

社内のファイルサーバーに図面データや提案書を保管していたため、リモートワーク時にファイルにアクセスできず、出社が前提の働き方が続いていました。VPNの導入も検討しましたが、設定の複雑さと費用面で断念。ファイルサーバーも導入から7年が経過しており、ハードウェアの寿命も心配な状態です。

やったこと

SharePoint OnlineとOneDriveを使い、ファイルサーバーの中身をクラウドに移行しました。部門ごとのSharePointサイトを作成し、フォルダ構成は元のファイルサーバーのものをベースにしつつ、明らかに不要なデータ(10年前のプロジェクトのバックアップなど)は移行せずアーカイブ。移行にはSharePoint Migration Toolを使い、約2TBのデータを2週間で移行しました。

同時に、SharePointのアクセス権限を部門単位で設定し、他部門のファイルが見えない構成にしています。

効果

ファイルサーバーのリース費用(月額約3万円)と保守費用が削減され、VPNなしでどこからでもファイルにアクセスできるようになりました。週2日のリモートワークが導入され、採用面でもプラスに働いています。

事例2:Teamsで社内コミュニケーションを一元化(物流会社・45名)

課題

本社と3つの倉庫拠点の間で、連絡手段がバラバラでした。本社はメール、倉庫は個人のLINE、急ぎの連絡は電話、ファイルのやり取りは個人のGmailからの添付。情報が分散して「言った・聞いていない」のトラブルが頻発し、重要な情報が個人のスマートフォンにしか残っていないことも珍しくありませんでした。

やったこと

Teamsを全社の連絡基盤として導入。業務別にチャンネルを作成し、「配送連絡」「在庫確認」「設備トラブル」「全社連絡」といった目的別のチャンネルを設けました。

倉庫スタッフはPCを持たないため、個人スマートフォンにTeamsアプリをインストールする形で対応。業務時間外の通知を受け取らない設定(通知の静音時間)を案内し、プライベートとの境界を明確にしました。

導入時のポイントは「いきなり全機能を使わせない」こと。最初の1か月はチャットとチャンネル投稿だけに絞り、慣れてきた段階でファイル共有、通話、Plannerによるタスク管理を段階的に追加しました。

効果

個人LINEでの業務連絡がほぼゼロになり、情報がTeamsに集約されるようになりました。「あの件、どこに書いてあったっけ」という検索性も大幅に向上。拠点間の電話連絡が7割減り、特に「折り返し待ち」の時間ロスが解消されました。

退職者が出た際も、業務データがTeamsに残っているため引き継ぎがスムーズになるという副次的な効果も出ています。

事例3:Power Automateで月次レポートを自動化(人材紹介・25名)

課題

営業担当者が毎月末にExcelで月次報告書を作成し、メールで上長に提出する運用を続けていました。上長はそれを集計して経営会議用の資料を作成。この一連のプロセスに毎月丸2日かかっており、しかも集計ミスや提出遅れが常態化していました。

やったこと

Microsoft Formsで月次報告の入力フォームを作成し、Power Automateで以下のフローを構築しました。毎月25日にTeamsで全営業担当者にフォームのリンクを自動送信。フォームへの回答がSharePointリストに自動蓄積。月末にPower Automateがリストのデータを集計し、Excelテンプレートに流し込んでSharePointに保存。完成したレポートのリンクを上長にTeamsで自動通知。

フローの構築自体は、Power Automateのテンプレートをベースにカスタマイズする形で、情シス担当者が約2日で完成させています。

効果

月次レポートの集計作業が丸2日からほぼゼロに。営業担当者もExcelを開いて入力する手間からフォームに回答するだけになり、提出率が100%になりました。集計ミスもなくなり、経営会議での報告データの信頼性が向上しています。

「Power Automateでこんなことができるなら、他の業務も自動化したい」という声が社内から上がり、経費精算の承認フローや、新規クライアント情報の登録フローも順次自動化を進めています。

活用を進めるための共通のコツ

3社に共通するのは「一気にやらない」アプローチです。いきなり全機能を展開するのではなく、最も困っている課題に絞って1つの機能を導入し、成功体験を作ってから次のステップに進んでいます。

もうひとつは「チャンピオンユーザー」の存在です。ITに詳しい社員を1〜2名巻き込み、部門内での活用推進役になってもらうことで、情シスが一人で全社の利用促進を行うよりもはるかに効率的に浸透させることができます。

Microsoft 365の機能はすでに契約に含まれています。追加コストなしで業務改善の第一歩を踏み出せるのは、中小企業にとって大きなアドバンテージです。

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