情シス担当者が辞めたらどうする? ― 退職・採用難時代のIT運用継続計画

ある日突然、情シス担当者から「来月で退職します」と言われたら――中小企業の経営者やマネージャーにとって、これほど恐ろしいシナリオはありません。

ネットワークの構成、サーバーの管理者パスワード、各種SaaSの契約情報、バックアップの手順。これらが担当者の頭の中にしかなければ、退職と同時にIT運用は事実上停止します。後任の採用には3〜6ヶ月、引き継ぎにさらに数ヶ月。その間、企業は「ITが分かる人がいない」状態で事業を続けなければなりません。

IT人材の採用がますます困難になっている現実

経済産業省の調査によると、2030年には最大79万人のIT人材が不足するとされています。この需給ギャップは2026年現在すでに深刻で、特に中小企業にとってIT人材の採用は困難を極めています。

大企業やIT企業と比較して給与水準が低いこと、最新技術に触れる機会が限られること、キャリアパスが見えにくいこと――こうした要因から、優秀なIT人材は中小企業の情シスポジションを避ける傾向があります。求人を出しても応募が来ず、来ても技術レベルが合わない、あるいは条件面で折り合わないというケースが大半です。

退職リスクに備える「IT運用継続計画」

採用が難しいなら、退職リスクを前提とした体制を構築する必要があります。以下の4つのステップで、IT運用のBCP(事業継続計画)を策定しましょう。

ステップ1:IT資産・情報の棚卸しと文書化

まず最優先で文書化すべき情報は以下の項目です。

管理者アカウント一覧: Microsoft 365のグローバル管理者、Google Workspaceの特権管理者、各種SaaSの管理者アカウントとパスワード。これらは担当者個人のメールアドレスではなく、組織用のアカウント(admin@社名.co.jp など)に紐づけてください。

ネットワーク構成図: ルーター、スイッチ、Wi-Fiアクセスポイント、VPN装置の設定情報。IPアドレス体系、VLANの設計も含めます。

契約・ライセンス一覧: SaaS、ドメイン、SSL証明書、ISP、回線、保守契約の一覧。契約先、金額、更新日、担当連絡先を一覧化します。

定常業務の手順書: バックアップ確認、パッチ適用、アカウント作成・削除、入退社手続きなど、定期的に発生する作業の手順書を作成します。

これらの文書は、担当者以外がアクセスできる場所(SharePointの限定共有フォルダなど)に保管し、少なくとも四半期に1回は内容を更新してください。

ステップ2:緊急連絡先マップの作成

IT関連のトラブルが発生した際に、担当者不在でも連絡できる先を整理しておきます。ISP(回線障害時)、Microsoft / Google のサポート窓口、SaaS各社のサポート連絡先、ハードウェア保守業者、情報セキュリティインシデント対応業者――これらを「緊急連絡先マップ」として1枚にまとめましょう。

ステップ3:「2人目」の確保(社内 or 社外)

ひとり情シスの最大のリスクは「1人」であることそのものです。正社員の採用が難しい場合、以下の選択肢があります。

社内の副担当者の育成: IT に関心のある社員を副担当者として指名し、基本的な管理業務(アカウント作成、パスワードリセットなど)を教育します。完全な代替ではなくても、「1次対応ができる人がもう1人いる」だけでリスクは大幅に下がります。

IT運用アウトソーシング: 外部の専門業者に月額固定でIT運用を委託する方法です。担当者の退職時にも、外部パートナーが継続的に運用を支えてくれるため、引き継ぎのリスクが軽減されます。

フリーランスITエンジニアの活用: 週1〜2日の稼働で、特定の業務(セキュリティ監視、サーバー管理など)を委託する形態です。

ステップ4:クラウド化で「人に依存しない」環境を作る

オンプレミスのサーバーやネットワーク機器は、担当者の専門知識に大きく依存します。クラウドサービスへの移行は、属人化リスクの低減に直結します。

ファイルサーバーをSharePoint Online / OneDriveに移行すれば、物理サーバーの管理が不要になります。オンプレミスのActive Directoryをクラウド(Entra ID)に移行すれば、認証基盤の管理が簡素化されます。社内メールサーバーをExchange Onlineに移行すれば、サーバーの保守・障害対応から解放されます。

今いる担当者を「辞めさせない」ことも重要

退職に備えることと同時に、今いる担当者が辞めない環境を作ることも経営の責任です。

適切な評価と報酬を与えること。「何も起こらないのが当たり前」ではなく「何も起こらないように支えてくれている」ことを正当に評価してください。研修やカンファレンスへの参加機会を提供し、スキルアップの機会を確保すること。そして、1人で抱えさせない体制を作ること――外部パートナーの活用は、担当者の負荷軽減にも直結します。

情シス365は、ひとり情シスの「もうひとりの情シス」として、IT運用の継続性を支えます。担当者の退職に備えたドキュメント整備の支援から、日常的なIT運用のアウトソーシングまで、無料相談からお気軽にお問い合わせください。

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