Microsoft 365 Business PremiumとE3の違いを徹底比較 ― どんな企業がE3を選ぶべきか
Microsoft 365のプラン選定で最も悩ましいのが、Business PremiumとE3の比較です。月額料金はBusiness Premiumが1ユーザーあたり税抜3,298円、E3が4,750円(2026年3月時点)。差額は月1,452円ですが、この差額で何が変わるのかを正確に理解している企業は意外と少ないです。
結論から言えば、従業員300名以下で、高度なコンプライアンス要件や大規模なデバイス管理が不要な企業はBusiness Premiumで十分です。一方、300名を超える企業、上場準備中の企業、厳格な情報管理が求められる業種ではE3が必要になります。
この記事では、両プランの違いを機能別に整理し、E3を選ぶべき具体的なケースを解説します。
最大の違い:ユーザー数の上限
Business Premium(およびBusinessシリーズ全体)の最大ユーザー数は300名です。301名以上の組織ではBusinessシリーズを契約できず、Enterpriseシリーズ(E3 / E5)を選択する必要があります。
現在は300名以下でも、M&Aや事業拡大で300名を超える見通しがある場合は、最初からE3で構築しておくことで将来のプラン移行コストを回避できます。
参考: Microsoft 365 Business Premium のサービスの説明 - Microsoft Learn
主要機能の比較
Officeアプリ
両プランともWord、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNote、Accessのデスクトップ版が含まれます。この点で両プランに差はありません。
クラウドサービス
Exchange Online、SharePoint Online、OneDrive for Business、Microsoft Teamsは両プランで利用可能です。ただし、Exchange Onlineのメールボックスサイズに違いがあります。Business Premiumは50GB、E3は100GBです。メールの保存量が多い社員や、長期間のメール保持が必要な場合、E3の100GBは大きなメリットです。
OneDrive for Businessのストレージも異なります。Business Premiumは1ユーザーあたり1TB、E3は最大5TB(管理者がリクエストで拡張可能)です。
セキュリティ
ここが両プランの最も大きな差が出る領域です。
Business Premiumに含まれるセキュリティ機能:
Business PremiumにはMicrosoft Defender for Office 365 プラン1が含まれており、フィッシング対策(偽装保護を含む)、安全なリンク、安全な添付ファイルなどのメールセキュリティ機能を利用できます。また、Intune(デバイス管理)とMicrosoft Defender for Businessが含まれており、エンドポイント保護まで1つのライセンスでカバーできます。
中小企業向けのセキュリティという観点では、Business Premiumは非常にコストパフォーマンスが高いプランです。
E3のセキュリティ機能:
E3にはDefender for Office 365 プラン1が標準では含まれません。E3のフィッシング対策はExchange Online Protection(EOP)レベルとなり、偽装保護などの高度な機能を使うにはDefender for Office 365をアドオンとして追加購入する必要があります。
一方、E3にはMicrosoft Defender for Endpoint プラン1が含まれ(2023年以降)、エンドポイント保護はBusiness Premiumと同等以上のカバレッジがあります。
ここは混乱しやすいポイントです。「E3の方が上位プランだからセキュリティも上」と思われがちですが、メールセキュリティに関してはBusiness Premiumの方が標準で充実しています。E3でBusiness Premium同等のメールセキュリティを実現するには、Defender for Office 365 プラン1(月額約290円/ユーザー)の追加購入が必要です。
デバイス管理(Intune)
Business Premium: Microsoft Intune が含まれますが、一部の高度な機能(IntuneのプランとしてはIntune Plan 1に相当)に限定されます。Windows、macOS、iOS、Androidの基本的なデバイス管理・アプリ管理は可能です。中小企業の一般的なデバイス管理にはこれで十分です。
E3: 同じくIntune Plan 1が含まれます。デバイス管理の基本機能はBusiness Premiumと同等です。ただし、E3はWindows Enterprise E3ライセンスを含むため、Windows Autopilotの全機能やWindows Enterprise LTSC(長期サービスチャネル)の利用権が付きます。
大量のWindows PCを統一管理する必要がある大規模組織では、Windows Enterprise E3の付属がE3を選ぶ大きな理由になります。
コンプライアンス・情報保護
ここがE3が明確に優位な領域です。
Business Premium: 基本的なデータ損失防止(DLP)ポリシー、手動での秘密度ラベル適用が利用可能です。
E3: 上記に加えて、以下の機能が利用できます。
- Microsoft Purview Information Protection(高度な機能): 秘密度ラベルの自動適用(メールやドキュメントの内容に基づいて自動分類)
- Microsoft Purview eDiscovery(Standard): 訴訟や監査に備えたデータの検索・保持・エクスポート
- アーカイブメールボックス: メインメールボックスとは別に、無制限のアーカイブ領域を提供
- 訴訟ホールド: メールボックスのデータを法的保持し、ユーザーが削除しても保全
- 高度なDLPポリシー: より詳細な条件設定やカスタムポリシーの作成
上場企業やそれに準ずるガバナンス体制が求められる企業では、eDiscoveryと訴訟ホールドは実質的に必須機能です。
Windows Enterprise
Business Premium: Windows Proライセンスが前提。PCにプリインストールされたWindows Proをそのまま使います。
E3: Windows Enterprise E3が含まれます。Windows ProからEnterpriseへのアップグレード権が付与され、以下の機能が追加されます。
- Credential Guard: 資格情報の窃取を防止する仮想化ベースのセキュリティ機能
- AppLocker: アプリケーションの実行制御をきめ細かく設定
- Direct Access / Always On VPN: VPN接続の自動化
- Windows Autopilot(全機能): ゼロタッチデプロイメントの完全な機能セット
- 長期サービスチャネル(LTSC): 機能更新を受けない固定バージョンのWindows
これらの機能が必要になるのは、セキュリティ要件が高い業種(金融、医療、防衛関連など)や、PC台数が多く統一的な展開・管理が必要な大規模組織です。
Power Platform
Business Premium: Power Appsの一部機能(Office 365に含まれる範囲)、Power Automateの基本フロー(デスクトップフローは含まれない)。
E3: 同等(Office 365に含まれる範囲のPower Apps / Power Automate)。Power Platformのフル機能を使うには、どちらのプランでも追加ライセンスが必要です。
E3を選ぶべき具体的なケース
ケース1:従業員300名を超える(または超える見通し)
Businessシリーズの上限を超えるため、E3以上が必須です。
ケース2:上場企業または上場準備中
J-SOX対応やコンプライアンス監査のために、eDiscovery、訴訟ホールド、アーカイブメールボックスが実質的に必要です。これらはBusiness Premiumには含まれていません。
ケース3:秘密度ラベルの自動適用が必要
機密文書の分類を手動ではなく自動で行いたい場合、E3のPurview Information Protection(高度な機能)が必要です。たとえば「マイナンバーを含むExcelファイルに自動で機密ラベルを付与する」といった運用です。
ケース4:メールの長期保存が必要
業界規制や社内ポリシーでメールの長期保存(5年、10年)が求められる場合、E3のアーカイブメールボックス(無制限)が必要です。Business Premiumの50GBメールボックスでは、数年分のメールを保持するのが困難です。
ケース5:Windows Enterpriseの機能が必要
Credential Guard、AppLocker、LTSCなどWindows Enterprise固有の機能が業務やセキュリティ要件で必要な場合。
ケース6:大量PCのゼロタッチデプロイ
数百台規模のPCを定期的に入れ替える運用があり、Windows Autopilotのフル機能(事前プロビジョニングやセルフデプロイモードなど)を活用したい場合。
Business Premiumで十分なケース
逆に、以下のすべてに該当する企業はBusiness Premiumで十分です。
- 従業員300名以下
- 上場予定がなく、高度なコンプライアンス要件がない
- メールの長期保存(5年超)の規制がない
- Windows Proの標準機能で運用できる
- eDiscoveryや訴訟ホールドの必要性が現時点でない
中小企業の大半はこのケースに該当します。Business Premiumはセキュリティ機能(Defender for Office 365 P1 + Defender for Business + Intune)が充実しており、中小企業にとって最もバランスの良いプランです。
コスト比較
100名規模の企業で年間コストを比較します(2026年3月時点の税抜価格)。
Business Premium:3,298円 × 100名 × 12ヶ月 = 年間約3,958,000円 E3:4,750円 × 100名 × 12ヶ月 = 年間約5,700,000円
差額は年間約174万円です。この差額で得られる追加機能(eDiscovery、アーカイブ、Windows Enterprise、100GBメールボックス等)が自社に必要かどうかが判断基準になります。
なお、E3にBusiness Premium同等のメールセキュリティ(Defender for Office 365 P1)を追加すると、さらに月額290円/ユーザー(年間約348,000円)が加算される点に注意してください。
まとめ
Business PremiumとE3の選択は「規模」と「コンプライアンス要件」の2軸で判断するのがシンプルです。300名以下で高度なコンプライアンスが不要ならBusiness Premium、300名超またはeDiscovery・アーカイブが必要ならE3です。
迷った場合は、まずBusiness Premiumで始め、組織の成長やコンプライアンス要件の変化に応じてE3へ移行するのが現実的なアプローチです。プラン移行は管理センターから実行でき、データの移行は不要です。
情シス365では、Microsoft 365のライセンス選定から導入・運用までワンストップで支援しています。「どのプランが最適かわからない」「現在のプランが適切か見直したい」という方は、お気軽にご相談ください。