【IT PMI連載 第8回】テナント統合の実務|Google Workspace / Microsoft 365の移行事例
M&A後のIT統合(IT PMI)において、最も技術的な難易度が高いのがテナント統合です。Microsoft 365やGoogle Workspaceのテナントを統合するには、メール、ファイル、アカウント、ドメイン、セキュリティ設定など多くの要素を扱う必要があります。
本記事では、テナント統合の実務について、Microsoft 365とGoogle Workspaceそれぞれのケースを解説します。
Microsoft 365 テナント統合の流れ
事前準備
1. テナント間の信頼関係の構築
統合先テナントと統合元テナントの間で、ゲストアクセスやクロステナントの設定を行います。これにより、移行期間中の共同作業が可能になります。
2. ドメインの確認と計画
統合元のカスタムドメインを統合先に移す必要があります。ドメインはM365テナントに紐づくため、移管のタイミングと手順を慎重に計画します。
3. 移行対象データの棚卸し
Exchange Online(メール・カレンダー・連絡先)、OneDrive、SharePoint、Teamsのデータ量を把握し、移行スケジュールを見積もります。
移行作業
メールボックスの移行
Exchange Onlineのクロステナント移行機能、またはサードパーティの移行ツール(BitTitan MigrationWiz等)を使用します。
移行時の注意点として、メールフロー(MXレコード)の切り替えタイミングがあります。切り替え中に一時的にメールが届かない時間が発生しうるため、業務への影響が少ない時間帯(週末夜間等)に実施するのが一般的です。
OneDrive / SharePointデータの移行
SharePoint Migration Tool(SPMT)やサードパーティツールを使います。データ量が大きい場合は移行に数日〜数週間かかるため、段階的な移行が現実的です。
共有リンクやアクセス権限は移行時に再設定が必要になるケースが多く、事前にフォルダ構成と権限設計を見直すよい機会でもあります。
Teamsの移行
Teamsのチーム・チャネル構成は、テナントをまたいだ移行がネイティブではサポートされていません。チャット履歴やファイルの移行には専用ツールが必要です。実務上は、新テナントにチーム構成を再作成し、必要なファイルをSharePoint経由で移行するケースが多いです。
ドメイン移管
統合元テナントからカスタムドメインを削除し、統合先テナントに追加します。この作業中はメールフローが中断するため、DNSのTTL短縮やMXレコードの事前準備が重要です。
移行後の作業
- ユーザーへの新環境の案内と、パスワードリセット
- 旧テナントのライセンス解除とアカウント無効化
- 旧テナントの保持期間(監査ログ・訴訟ホールド対応)の確認
- 新環境でのセキュリティポリシー・条件付きアクセスの適用
Google Workspace テナント統合の流れ
基本的なアプローチ
GWSのテナント統合も大きな流れはM365と似ていますが、いくつかの違いがあります。
データ移行ツール
Google Workspace Migration for Microsoft Exchange(GWMME)はExchangeからの移行用です。GWSテナント間の移行にはGoogle Workspace Migrate、またはサードパーティツールを使用します。
ドメイン移管
GWSでもカスタムドメインの移管が必要です。移管先テナントにドメインを追加し、DNS設定を更新します。
Google Driveの移行
共有ドライブのデータ移行は比較的スムーズですが、個人のマイドライブに保存された業務データの移行は、ユーザーごとの対応が必要になることがあります。
GWSからM365への移行(プラットフォーム変更を伴うケース)
買収に伴い、GWSからM365に(またはその逆に)プラットフォーム自体を変更するケースもあります。
この場合は以下が追加で必要になります。
- メール・カレンダー・連絡先のクロスプラットフォーム移行
- Googleドキュメント → Word/Excel/PowerPoint 形式への変換(レイアウト崩れの確認が必要)
- ユーザーへの新ツールのトレーニング
テナント統合でよくあるトラブル
1. メールの不達・遅延
DNSの伝播に最大72時間かかるため、MXレコード切り替え後にメールが旧サーバーに配信されるケースがあります。TTLの短縮と、切り替え後の監視体制が重要です。
2. 共有リンクの切れ
旧テナントのSharePoint/OneDrive/Google Driveの共有リンクは移行後に無効になります。社内外に共有していたリンクのリダイレクト設定や周知が必要です。
3. ユーザーの混乱
ログイン方法の変更、ファイルの保存場所の変更、ツールの切り替えは、ITに詳しくない社員にとってストレスになります。十分な事前周知と、移行後のサポート体制(ヘルプデスク)が不可欠です。
テナント統合は「プロジェクト」として進める
テナント統合は日常のIT運用とは質の異なる作業です。専門知識、計画力、プロジェクト管理能力が求められるため、社内のIT担当者だけで進めるのは難しいのが現実です。
情シス365のProject365は、テナント統合プロジェクトを要件定義から設計・移行・検証まで一気通貫で支援します。M365テナント間統合、GWSからM365への移行、その逆のパターンにも対応実績があります。