Microsoft 365のメールエイリアスとは? 1ライセンスで複数のメールアドレスを使う方法
「部署異動でメールアドレスが変わったが、旧アドレス宛のメールも受け取りたい」「営業用と管理用でメールアドレスを使い分けたい」「結婚で姓が変わったが、旧姓のアドレスも残したい」——こうした要望に、追加のライセンスコストなしで対応できるのがメールエイリアスです。
Microsoft 365(Exchange Online)では、1つのユーザーアカウントに最大400個のメールエイリアス(別名アドレス)を追加できます。エイリアス宛に届いたメールはすべてメインのメールボックスに配信されるため、複数のアドレスを使い分けながらも、管理するのは1つの受信トレイだけで済みます。
エイリアスの仕組み
プライマリアドレスとエイリアス
Exchange Onlineのユーザーには、1つのプライマリメールアドレスと、0個以上の**エイリアス(プロキシアドレス)**が設定されます。
たとえば、山田太郎さんのメール設定が以下のようになっているとします。
- プライマリアドレス:
t.yamada@contoso.co.jp - エイリアス1:
taro.yamada@contoso.co.jp - エイリアス2:
yamada@contoso.co.jp
この場合、3つのアドレスのどれに送られたメールも、すべて山田さんの1つの受信トレイに届きます。追加のメールボックスやライセンスは不要です。
エイリアスの上限
1ユーザーあたり最大400個のエイリアスを追加できます。実務上、400個に達することはまずありませんが、複数のドメインのアドレスをエイリアスとして追加するケースでは数十個になることもあります。
参考: Microsoft 365 にメール エイリアスを追加する - Microsoft Learn
エイリアスでできること・できないこと
できること
複数アドレスでの受信: エイリアスに送られたメールはすべてプライマリアドレスの受信トレイに届きます。
旧アドレスの維持: 部署異動や姓の変更でメインのアドレスを変えた場合でも、旧アドレスをエイリアスとして残しておけば、旧アドレス宛のメールを受信し続けることができます。
複数ドメインのアドレス: テナントに複数のカスタムドメインが追加されている場合、別ドメインのアドレスをエイリアスとして追加できます。たとえば、M&Aで買収した会社のドメインのアドレスをエイリアスで追加し、統合前後の両方のアドレスでメールを受信するような運用です。
できないこと(重要)
エイリアスアドレスでの送信(既定では不可): 既定の設定では、メールの送信時の差出人(From)アドレスはプライマリアドレスのみです。エイリアスアドレスを送信元として使うことはできません。
ただし、Outlookの設定で「差出人(From)」フィールドを手動で変更すれば、エイリアスアドレスから送信したように見せることは技術的には可能です。しかし、この方法はOutlookの種類(デスクトップ版 / Web版)や設定によって動作が異なるため、安定的な運用には向きません。
「特定のアドレスで送信も受信もしたい」という要件がある場合は、エイリアスではなく共有メールボックスの方が適しています。
エイリアスでのTeamsやサインイン: エイリアスアドレスでTeamsにメンションしたり、サインインしたりすることはできません。サインインに使えるのはUPN(ユーザープリンシパル名)のみです。
エイリアスごとの個別フォルダ振り分け(自動): エイリアス宛のメールを自動的に別フォルダに振り分ける標準機能はありません。Outlookの仕分けルールで「宛先アドレス」を条件にしてフォルダに振り分けることは可能です。
エイリアスの主な活用シーン
シーン1:結婚・改姓
旧姓の tanaka@contoso.co.jp から新姓の yamada@contoso.co.jp に変更する場合、プライマリアドレスを新姓に変更し、旧姓アドレスをエイリアスとして残します。名刺やWebサイトの表記を段階的に更新しつつ、旧姓アドレス宛のメールも漏れなく受信できます。
シーン2:M&A後のドメイン統合
買収した会社(fabrikam.com)のドメインを自社テナントに追加し、買収先の社員の旧アドレス(user@fabrikam.com)をエイリアスとして設定します。買収先の取引先がアドレス変更に対応するまでの間、旧ドメイン宛のメールを受信し続けられます。
エイリアス vs 共有メールボックス vs 配布グループ
「複数のアドレスでメールを受信する」という目的には、エイリアス以外にも選択肢があります。
エイリアス: 1人のユーザーが複数アドレスで受信する場合。送信元としては使えない(既定)。ライセンス追加不要。
共有メールボックス: 複数人で1つのアドレスのメールを共有する場合。送信元としても使える。ライセンス追加不要(50GB以下)。
配布グループ(メーリングリスト): 1つのアドレスに送ったメールを複数人に配信する場合。各メンバーの個人メールボックスにコピーが届く。
用途に応じて適切な仕組みを選択してください。判断基準は後述の記事「共有メールボックスとメーリングリストの違い」で詳しく解説しています。
運用上の注意点
エイリアスの棚卸し
退職者のアカウントを削除する際、そのアカウントに設定されていたエイリアスアドレスも一緒に削除されます。退職者のアドレス宛のメールを引き続き受信する必要がある場合は、削除前にそのアドレスを別のユーザーのエイリアスまたは共有メールボックスに付け替える必要があります。
SPFレコードへの影響
エイリアスが自社テナントに登録されたカスタムドメインのアドレスである限り、SPF/DKIM/DMARCの追加設定は不要です。ただし、エイリアスに別ドメインのアドレスを使う場合は、そのドメインのDNS設定が必要になります。
onmicrosoft.comのエイリアス
すべてのユーザーには、初期ドメイン(user@contoso.onmicrosoft.com)のアドレスが自動的にエイリアスとして付与されます。このエイリアスは削除できません。外部からこのアドレスにメールを送信されると受信してしまうため、必要に応じてメールフロールールで制御してください。
まとめ
メールエイリアスは、追加コストゼロで複数のメールアドレスを運用できるMicrosoft 365の便利な機能です。改姓やM&A後のドメイン統合など、メールアドレスの変更が発生する場面で活用できます。
ただし、「送信元としてそのアドレスを使いたい」「複数人でそのアドレスのメールを共有したい」という要件がある場合は、エイリアスではなく共有メールボックスが適切です。要件に応じて正しい仕組みを選択してください。
情シス365では、Microsoft 365のメールアドレス設計、エイリアス管理、共有メールボックスの構築を支援しています。「アドレスの管理が煩雑になっている」「M&Aでドメインが増えてメールの設計を見直したい」という方は、お気軽にご相談ください。