ひとり情シスの退職を機に情シス代行へ移行した事例(従業員80名・卸売業)
背景と課題
関東の卸売業B社(従業員80名)は、入社10年のIT担当者1名(ひとり情シス)がすべてのIT業務を担当していました。サーバー管理、ヘルプデスク、SaaSアカウント管理、セキュリティ対策のすべてが1人に集中しており、IT環境の全容はこの担当者の頭の中にしかない状態でした。
退職の意向が示されたことで、経営層は初めてIT属人化のリスクに気づきました。
導入の経緯
退職までの3ヶ月で、情シス365が引き継ぎ支援を並行して実施。IT環境の棚卸し(サーバー構成図、アカウント一覧、パスワード台帳、ベンダー連絡先)のドキュメント化を最優先で進めました。
導入内容(運用支援 月30時間規模)
ヘルプデスク対応、M365運用管理、セキュリティ対策(MFA・EDR・パッチ管理)、IT資産管理、入退社対応、月次レポートを実施しています。
導入効果
ひとり情シスの退職後も、IT運用は問題なく継続。属人化していた暗黙知が文書化され、「誰が辞めてもIT運用が止まらない」体制が実現しました。セキュリティ面では、EDR導入とMFA適用でセキュリティレベルが大幅に向上しています。
お客様の声
「もっと早く外注していれば、退職時のパニックは避けられた。今は月次レポートでIT環境の状態が可視化されているので、経営としても安心感がある」(代表取締役)
この事例から言えること
以下は本事例そのものの記録ではなく、同じリスクを抱える企業が検討する際の一般的な考え方です。
引き継ぎに使える時間は「退職の申し出から退職日まで」しかない
この事例では退職までに3ヶ月ありました。これは比較的恵まれたケースです。就業規則上の退職申し出期限は1ヶ月前としている企業が多く、実際には有給消化で実働がさらに短くなります。
ひとり情シスが10年在籍していれば、その間に導入したシステム、契約したベンダー、独自に組んだ運用が積み重なっています。それを1ヶ月で引き出すのは現実的ではありません。
だからこそ、退職の意向が示される前——つまり平常時に、最低限の情報を外に出しておく必要があります。
平常時に押さえておくべき5点
担当者が1名の企業が、その1名が不在になっても最低限の運用を続けるために、事前に確保しておくべき情報です。
1. 管理者アカウントの情報 M365 / Google Workspace の特権管理者、サーバーの管理者、ネットワーク機器の管理画面。経営層または別の管理職が、管理者アカウントに到達できる状態にしておきます。金庫や書面での保管でも構いません。
2. 契約しているサービスとベンダーの一覧 何を、どこと、いくらで、いつまで契約しているか。支払いが自動更新なら、その支払い方法と名義も含めます。
3. ネットワークとサーバーの構成 完璧な構成図でなくとも、「どこに何があるか」が分かるメモで十分です。機器の設置場所と、その機器が何をしているかが分かることが重要です。
4. 定期的に発生する作業 月次・年次で担当者が実施している作業(バックアップの確認、ライセンス更新、棚卸しなど)。担当者にとっては当たり前でも、外から見ると存在すら分かりません。
5. トラブル時の連絡先 回線業者、複合機のベンダー、業務システムのサポート窓口。障害時にどこへ連絡すればよいかが分からないと、復旧が大幅に遅れます。
「退職が決まってから」の進め方
すでに退職の申し出があった場合、限られた時間で優先すべき順序があります。
最優先:戻せないものを先に押さえる 管理者アカウントの権限移譲、パスワードの共有、支払い方法の名義変更。担当者が退職した後では取り戻せないものから着手します。特に、個人名義で契約されているサービスや、担当者の個人メールアドレスで登録されているアカウントは要注意です。
次点:日常業務が止まらない状態にする 問い合わせの受け口、入退社時の手順、月次作業。担当者がいなくなった翌日から発生する業務です。
後回しでよい:ドキュメントの整形 構成図をきれいに作り直す、マニュアルを体裁よくまとめる、といった作業は後からでもできます。まず情報を出させることが優先です。
「1名体制」という構造そのもののリスク
退職だけが問題ではありません。病気、事故、家庭の事情による長期離脱も同じ結果を招きます。
1名体制は、その1名が休めない構造でもあります。実際、ひとり情シスが有給を取りづらい、長期休暇を取れないという状態は多くの企業で発生しています。これは本人の負担であると同時に、企業のリスクでもあります。
外部委託は「担当者を置き換える」ためだけの選択肢ではなく、1名体制の冗長性を確保する手段としても機能します。担当者を残したまま、外部と併用する構成も選べます。
まとめ
- 引き継ぎに使える時間は**「退職の申し出から退職日まで」しかない**。多くの企業で実質1ヶ月未満
- 10年分の暗黙知を1ヶ月で引き出すのは非現実的。平常時に最低限の情報を外に出しておく必要がある
- 平常時に確保すべきは①管理者アカウント ②契約とベンダー一覧 ③構成情報 ④定期作業 ⑤トラブル時の連絡先の5点
- 退職が決まってからは、戻せないもの(アカウント権限・個人名義の契約)を最優先で押さえる
- ドキュメントの整形は後回しでよい。まず情報を出させることが優先
- 1名体制のリスクは退職だけではない。病気・事故による長期離脱も同じ結果を招く
- 外部委託は置き換えだけでなく、担当者を残したまま冗長性を確保する使い方もできる
「担当者が1名で、その人しか分からない領域がある」という状態に心当たりがある場合、退職の意向が示される前に着手できることがあります。情シス365の無料相談で、現状の棚卸しからご相談いただけます。現在の料金は料金ページをご覧ください。