📘 完全ガイド

カーブアウト
IT完全ガイド

事業売却・分社化・スピンオフを成功させるための IT 分離設計を全10ステップで解説。
TSA・スコープ7領域・クロージング前後9か月のタイムラインまで、この1ページで全体像を把握できます。

12記事
3フェーズ
7スコープ領域

このガイドについて

事業の一部を売却したり分社化したりするとき、最も後回しにされやすく、それでいてクロージング当日からの業務継続を左右するのが IT です。「親会社の Microsoft 365 から、売却対象の100名分だけを切り出して新会社のテナントに移したい」「親会社が契約している Salesforce / kintone を引き継ぎたい」「TSA は何を、いつまで、いくらで提供するのか」――こうした論点は、ディール条件交渉と並行して走らせないと TSA 期限直前に破綻します。

本ガイドは、カーブアウト IT 分離を戦略・計画フェーズ(第1〜5回)と実務・技術フェーズ(第6〜10回)の 2 部・全 10 ステップで体系化したものです。経営者・M&A アドバイザー・FAS・PE の方は第1〜5回を、情シス・IT 担当の方は第6〜10回を中心にお読みください。

こんな方におすすめ

  • 事業の一部を売却・分社化することが決まったが、IT 分離の進め方がわからない経営者・情シス
  • カーブアウト案件を進行中で、TSA の IT 条項をどう設計すべきか悩んでいる M&A アドバイザー・FAS
  • 買い手として、売り手から切り出されてくる IT 環境を引き受ける準備をしたい情シス
  • 「テナント分離」「SaaS 契約分割」「ドメインカットオーバー」など個別論点の実務手順を知りたい IT 担当者
  • カーブアウト IT 費用の構造と社内向け説明資料を準備したい PMI / PE 担当者

IT 分離スコープ7領域

カーブアウト IT 分離の対象は、システム単体ではなく 7 つの領域にまたがります。どの領域を「分ける/残す/一定期間共有する」のかを早期に決めることが、TSA 設計とプロジェクト計画の出発点になります。

🏢

テナント / ディレクトリ

Entra ID / Google ディレクトリのユーザー・グループを対象事業分だけ切り出し、新テナントへ移行

👤

アカウント / ID

対象従業員のメール・サインインID・MFA・パスワード移管。SSO で繋いでいた SaaS の付け替え

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SaaS 契約 / ライセンス

Microsoft 365 / Salesforce / kintone 等の契約分割。ボリュームディスカウントの再交渉

📁

データ / 共有領域

OneDrive・SharePoint・共有ドライブ・ファイルサーバの「持っていく / 残す / 共有する」の三択仕分け

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共存期間アクセス制御

Day 1 後しばらく旧テナントへアクセスが残る期間の DLP・Sensitivity Label・条件付きアクセス設計

🌐

ドメイン / DNS / メール

独自ドメインの所属切替、SPF / DKIM / DMARC 再設定、メール転送、Web サイト引越し

📜

契約 / TSA / コンプラ

TSA 期間・SLA・課金設計、個人情報・取引先データの取扱い、ログ・監査要件の引き渡し

クロージング前後9か月の典型タイムライン

中堅・中小企業のカーブアウトでは、サインから TSA 終了まで 6〜9 か月がひとつの目安です。Day 1(クロージング当日)に必要な最小限の独立性を確保し、TSA 期間中に本格的な分離を進めます。

サイン前 〜 -3M

IT デューデリ/カーブアウト準備リスト整備/スコープ仕分けドラフト

サイン後 -3M 〜 Day 1

TSA 草案/新テナント設計・調達/コミュニケーションプラン策定

Day 1 クロージング

新会社設立/Day 1 アクセス可能なミニマム環境/緊急時の手順整備

TSA 期間 Day 1 〜 +6M

テナント分離本実施/データ移行/SaaS 契約分割/ドメインカットオーバー

TSA アウト +6M 〜 +9M

残存アクセス停止/旧側クリーンアップ/監査ログ引き渡し/契約終了

Phase 1

戦略・計画フェーズ:カーブアウトIT分離の全体像を描く

経営者・M&A アドバイザー・FAS・PE の方はまずこのフェーズを押さえてください。M&A 取引の中で IT 分離をどう位置づけ、TSA をどう組み、費用構造をどう設計するかを扱います。

🔄 Project365

カーブアウト IT 分離、自社だけでは進められないと感じたら

情シス365 の「Project365」なら、カーブアウト IT 分離の計画策定から TSA 設計、テナント分離・SaaS 契約分割・ドメインカットオーバーの実務まで、プロジェクト全体をワンストップで支援します。

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Phase 2

実務・技術フェーズ:TSA期限までに分離を完了させる

情シス・IT 担当者・実行担当者の方向け。事前アセスメントから M365 / Google Workspace のテナント分離、SaaS 契約分割、ドメインカットオーバー、よくある失敗パターンの回避まで、TSA 期限を守るための具体手順を扱います。

Phase 3

分離後フェーズ:TSAアウトと新会社の運用立ち上げ

TSA 終了に向けたクリーンアップと、分社後の新会社の IT 運用体制を扱います。経営者・情シス・運用責任者の方に。「カーブアウトの後」を雑にしないことで、年間数十万〜数百万のコスト削減とセキュリティリスク低減が可能です。

カーブアウト IT 分離 チェックポイント

📋

サイン前にスコープを仕分ける

IT デューデリチェックリストを「カーブアウト準備リスト」として使い、7 領域のスコープを早期にドラフトする。

🗓️

TSA を Day 1 から逆算する

分離か共存かの判断を済ませ、TSA 期間内に何をどの順で終わらせるかを逆算で計画する。

💬

専門家に相談する

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FAQ

よくある質問

Q カーブアウトとは何ですか?

カーブアウト(Carve-Out)とは、親会社が事業の一部を切り出して売却・分社化・スピンオフする M&A 取引のことです。買い手側からは「事業の一部だけを買う」取引に見え、売り手側からは「一部だけを手放す」取引になります。IT 観点では、親会社のテナント・SaaS 契約・データ・アカウントから対象事業分だけを分離する必要があり、買い手のシステムへの統合(PMI)とは逆方向の難所が発生します。

Q カーブアウトと PMI の違いは?

PMI(Post-Merger Integration)は買い手側が「2つのIT環境を1つにまとめる」プロセスで、カーブアウトは売り手側が「1つのIT環境から事業の一部を切り出す」プロセスです。カーブアウトは共有データの仕分け・共存期間中のアクセス制御・TSA 期限管理など、統合にはない難しさが重なります。クロージング後、買い手側ではカーブアウトの結果を引き継いで PMI が始まります。

Q カーブアウトのIT分離はどのくらいの期間がかかりますか?

対象人数や共有データ量によりますが、50名規模で2〜4ヶ月、100〜300名規模で4〜6ヶ月が目安です。サインから Day 1 までの期間と、Day 1 から TSA 終了までの期間の両方を逆算してスケジュールを組みます。中堅・中小企業のカーブアウトでは、サインから 6〜9ヶ月のスケジュール感が一般的です。

Q TSA(Transition Service Agreement)とは何ですか?

TSA とは、クロージング後も一定期間、売り手(旧親会社)が買い手に IT 環境やサービスを継続提供する契約です。期間は通常 6〜12ヶ月で、この期間中に対象事業の IT を完全に分離・移管する必要があります。TSA 期限超過は追加コスト・契約違反のリスクとなるため、Day 1 からの逆算スケジュール管理が重要です。

Q カーブアウトのIT分離コストは売り手・買い手のどちらが負担しますか?

一般には SPA(株式譲渡契約)で取り決めますが、TSA 期間中の運用費用は買い手負担、テナント分離・データ移行などの一回限りのプロジェクト費用は売り手と買い手で按分、あるいは譲渡価格に織り込むケースが多く見られます。中堅・中小企業のカーブアウトでは事前に費用構造を見積もっておかないと、後から想定外のコストが発覚するため、サイン前の IT デューデリで概算を押さえておくことが重要です。

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