SaaSの契約が増えすぎて管理できない|中小企業のSaaS管理3ステップ
「気づいたらSaaSが30個」問題
Slack、Zoom、Notion、freee——気づけば月額の合計が数十万円。しかも誰が何を使っているか全容を把握できていない。この状態は、次の3つの問題を同時に抱えています。
コストの問題。 使われていないアカウントに課金が続きます。退職者の分が解約されないまま残っているケースが典型です。
セキュリティの問題。 部門が独自に契約した「シャドーSaaS」には、会社の情報が入っています。IT部門が存在を知らないため、退職者のアカウントも止められません。
事業継続の問題。 契約者が退職すると、そのSaaSの管理権限が失われます。支払いカードの名義人が不在になり、更新できずにサービスが止まる事故も起きています。
SaaS管理は「棚卸し → 削減 → 仕組み化」の順で進めます。
ステップ1:全SaaSの棚卸し
経理の支払いデータから洗い出す
最も確実な方法は、経理部門のクレジットカード明細と口座振替の履歴から、SaaS関連の支払いをリストアップすることです。 各部門へのヒアリングだけでは、担当者が忘れているものや、申告しづらいもの(個人カードで立て替えているケース)が漏れます。
過去12ヶ月分を見てください。年払いのサービスは、月次の明細だけ見ても出てきません。
記録する項目
洗い出したSaaSについて、次を一覧化します。
| 項目 | なぜ必要か |
|---|---|
| サービス名 | 機能重複の判定に使う |
| 月額・年額費用 | 削減効果の算定に使う |
| 契約者(誰の名義か) | 退職時のリスク把握 |
| 支払い方法 | 個人カード立替が混ざっていないか |
| 利用部門・利用人数 | 実際に使われているかの判定 |
| 契約更新日 | 解約可能なタイミングの把握 |
| 保存している情報の種類 | 個人情報・機密情報の所在把握 |
最後の「保存している情報の種類」は見落とされがちですが重要です。顧客の個人情報が入っているSaaSがどれかを把握していないと、情報漏洩時の対応ができません。
シャドーSaaSを見つける
経理データに出てこないものもあります。無料プランで使われているSaaSです。
Google WorkspaceやMicrosoft 365を使っている場合、「サードパーティアプリの連携状況」から、社員がどの外部サービスに会社アカウントで連携しているかを確認できます。 GWSなら管理コンソール → セキュリティ → APIの制御、M365ならEntra管理センターのエンタープライズアプリケーションで確認します。
ここで、IT部門が把握していないサービスが多数見つかることがよくあります。
ステップ2:無駄の削減
棚卸しの結果から、次の順に手を付けます。
使われていないSaaSの解約。 最終ログイン日が数ヶ月前のアカウントは、まず利用状況を確認してください。部門ごと使っていないケースもあります。
退職者アカウントの削除。 有料アカウントが残ったままのケースは非常に多く、ここだけで数万円/月の削減になることがあります。
機能が重複しているSaaSの統一。 チャットツールが2つ、ファイル共有が3つ、という状態は珍しくありません。統一すると、コストだけでなく「どこに情報があるか分からない」問題も解消されます。
過剰なプランのダウングレード。 全員を上位プランにしているが、上位機能を使っているのは一部だけ、というケースです。プランを混在させられるSaaSなら、必要な人だけ上位にします。
年払いへの切り替え。 継続が確実なサービスは、年払いにすると10〜20%程度安くなるものが多くあります。ただし途中解約ができなくなるため、継続が確実なものに限ってください。
年間数十万円規模の削減になるケースは珍しくありません。削減額は「棚卸しの工数」を上回ることがほとんどです。
ステップ3:管理の仕組み化
削減して終わりにすると、1年後には同じ状態に戻ります。再発を防ぐ仕組みが必要です。
新規契約のルール
新規のSaaS契約時はIT部門の確認を必須にします。 ただし「禁止」にすると、承認を得ずに使う人が増えて逆効果です。「申請すれば通る」状態にした上で、次を確認する運用が現実的です。
- 既存のSaaSで代替できないか
- 保存する情報に個人情報・機密情報が含まれるか
- SSO(シングルサインオン)に対応しているか
- 契約者を個人名ではなく部門・会社名義にできるか
入退社時のチェックリスト
入社時と退職時に処理すべきSaaSアカウントを一覧化しておきます。 属人的に対応していると、必ず漏れます。SaaSが10個あれば、退職者1人につき10箇所の停止確認が必要です。
SSOを導入していれば、この作業を1箇所に集約できます。SaaSが増えてきた企業ほど、SSOの導入効果は大きくなります。
定期棚卸し
四半期に1回、次を確認します。
- 新しく増えたSaaSはないか(経理データとサードパーティ連携を再確認)
- 使われていないアカウントはないか
- 契約更新が近いものはないか
四半期が難しければ半期でも構いません。「やる時期を決める」ことが重要で、決めていないと永久にやらないまま増え続けます。
よくあるつまずき
「棚卸しを始めたが、途中で止まった」 — 完璧を目指すと終わりません。まず経理データから金額の大きい順に上位10件を押さえるだけでも、削減効果の大半は取れます。
「解約したいが、契約者が退職済みで管理画面に入れない」 — 実際によくある事態です。SaaSのサポートに連絡して所有権移転の手続きを取ることになりますが、時間がかかります。だからこそ契約者を個人名義にしないルールが効きます。
「部門が反発して解約できない」 — コスト削減だけを理由にすると反発されます。「同じことが既存のツールでできる」「情報が分散していてリスクがある」という業務上の理由を添えると通りやすくなります。
まとめ
- SaaS管理は**「棚卸し → 削減 → 仕組み化」**の順で進める
- 棚卸しは経理のカード明細・口座振替の過去12ヶ月分から。ヒアリングだけでは漏れる
- 無料プランのシャドーSaaSは、GWS/M365のサードパーティ連携一覧から見つかる
- 各SaaSについて**「どんな情報が入っているか」まで記録する**。漏洩時の対応可否が変わる
- 削減は退職者アカウント → 未使用 → 機能重複 → 過剰プランの順で効果が大きい
- 契約者を個人名義にしない。退職すると管理画面に入れなくなる事故が起きる
- 新規契約は禁止ではなく**「申請すれば通る」状態**にする。禁止するとシャドーITが増える
- 棚卸しの時期を決める。決めないと永久にやらず、1年で元の状態に戻る
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