VMwareからAWSへの移行ガイド|中小企業が使える移行パスとコスト最適化

AWSへの移行が選ばれる理由

VMwareからの移行先としてAWSが選ばれる理由は、クラウドインフラとしてのシェアの大きさ、豊富な移行支援ツール、そして柔軟な料金体系にあります。

特に中小企業にとってのメリットは3つです。初期投資なしで始められる従量課金モデルであること、AWS Application Migration Service(MGN)という無料の移行ツールが提供されていること、リザーブドインスタンスやSavings Plansで長期運用のコストを大幅に削減できることです。

AWSへの移行パスは3つ

パス1:AWS Application Migration Service(MGN)でEC2に移行

最も一般的な移行方法です。VMwareのVMをAmazon EC2インスタンスとしてAWS上で稼働させます。VMware固有の仮想化レイヤーから完全に脱却し、AWSのネイティブなサービスを活用できます。

向いている企業は、VMware固有の機能(vSAN、NSX等)に依存していない企業、シンプルなサーバー仮想化のみ利用している企業、AWS上の他のサービス(RDS、S3等)も将来的に活用したい企業です。

パス2:VMware Cloud on AWS

AWS上にVMware環境をそのまま展開するサービスです。既存のVMware管理ツール(vCenter)をそのまま使えるため、運用スキルの転換が不要です。

ただし、専用のベアメタルホストを利用するためコストが高く、中小企業の規模感には合わないケースが多いです。最低構成でも月額数百万円規模になるため、本記事ではパス1のEC2移行を中心に解説します。

パス3:アプリケーション単位でのモダナイゼーション

VMのリフト(そのまま移行)ではなく、アプリケーションをコンテナ化やサーバーレスに作り替えるアプローチです。長期的にはコスト効率が最も高くなりますが、開発工数が大きいため、段階的に取り組むのが現実的です。まずEC2に移行し、その後段階的にモダナイゼーションを進めるのが推奨パターンです。

EC2への移行手順

Step 1:AWSアカウントと環境の準備

AWSアカウントを作成し、基本的なネットワーク環境を構築します。VPC(仮想ネットワーク)を作成し、オンプレミスのネットワークセグメントに対応するサブネットを設計します。

オンプレミスとAWSの間の接続方式も決定します。移行期間中はSite-to-Site VPN(IPsec VPN)で接続するのが一般的です。大量のデータ転送が必要な場合はAWS Direct Connectも選択肢ですが、中小企業の規模ならVPNで十分なケースがほとんどです。

Step 2:AWS Application Migration Service(MGN)の設定

MGNはVMwareのVMをEC2に移行するための無料ツールです。設定の流れとして、AWSマネジメントコンソールからMGNを初期化し、移行元のVMにMGNエージェントをインストールします。WindowsならMSIインストーラー、Linuxならシェルスクリプトで導入可能です。

エージェントがインストールされると、VMのディスクデータがAWS上に継続的にレプリケーションされます。初回は全データのコピー、その後は差分のみが同期されるため、本番切り替え時のダウンタイムを最小限に抑えられます。

Step 3:テスト移行の実施

本番切り替えの前に、必ずテスト移行を行ってください。MGNのコンソールから「テストインスタンスの起動」を実行すると、レプリケーション済みのデータからEC2インスタンスが作成されます。

テストで確認すべきポイントは、OSが正常に起動するか、アプリケーションが正常に動作するか、ネットワーク接続(DNS解決、他サーバーとの通信)が正しいか、パフォーマンス(レスポンスタイム、ディスクI/O)が許容範囲内かです。

問題が見つかった場合は修正し、再度テスト移行を実行します。テストインスタンスは確認後に削除すれば課金は最小限です。

Step 4:本番切り替え(カットオーバー)

テストで問題がないことを確認したら、本番切り替えを実施します。

切り替え当日の流れとして、まずVMware側のVMをシャットダウンし、MGNで最終差分の同期を実行します。その後MGNから「カットオーバーインスタンスの起動」を実行し、DNS/IPアドレスの切り替えを行い、動作確認を実施します。

ロールバック計画として、切り替え後に問題が発生した場合に備え、VMware側のVMはすぐに再起動できる状態で保持してください。少なくとも1〜2週間はVMware環境を並行稼働できるようにしておくのが安全です。

Step 5:移行後の最適化

EC2インスタンスのサイズ(インスタンスタイプ)は、移行直後は元のVMと同等のスペックで起動しますが、実際の使用率を1〜2週間モニタリングした後、適切なサイズに調整してください。AWS Compute Optimizerが最適なインスタンスタイプを推奨してくれます。

VMware Toolsのアンインストールも忘れずに行ってください。移行先のEC2上でVMware Toolsを削除し、代わりにAWS Systems Manager(SSM Agent)やCloudWatchエージェントをインストールします。

コスト最適化のポイント

リザーブドインスタンス(RI)

常時稼働のサーバー(ファイルサーバー、業務システム等)は、1年または3年のリザーブドインスタンスを購入することで、オンデマンド料金から最大72%の割引を受けられます。移行後1〜2ヶ月で使用パターンが安定したら、RIへの切り替えを検討してください。

Savings Plans

Compute Savings Plansは、特定のインスタンスタイプに縛られず、時間あたりの使用量をコミットすることで割引を受けられる柔軟なプランです。RIほどの割引率はありませんが、インスタンスタイプの変更やリージョン移動が自由にできるメリットがあります。

自動スケジューリング

開発・検証環境など、業務時間外は不要なサーバーは、AWS Instance Schedulerで自動的に停止・起動をスケジュールできます。平日9時〜21時のみ稼働する設定にすれば、常時稼働に比べてコストを約60%削減できます。

ストレージの最適化

EBSボリュームのタイプ選択も重要です。高IOPS不要なワークロードはgp3(汎用SSD)で十分です。アクセス頻度の低いデータはS3に移動し、EC2のEBSボリュームを縮小することでストレージコストを削減できます。

AWS移行の注意点

データ転送時間

初回レプリケーションには、データ量とネットワーク帯域に応じた時間がかかります。100GBのVMでインターネット回線100Mbpsの場合、約2〜3時間が目安です。TBクラスのデータがある場合は、AWS Snowballでの物理転送も選択肢に入ります。

セキュリティグループの設計

AWSのセキュリティグループ(ファイアウォール)は、VMwareのファイアウォールやACLとは異なる設計思想です。VMware側のネットワーク設定を棚卸しし、AWS側で同等のルールを事前に設計してください。

ライセンスの確認

Windows ServerのOEMライセンスはAWSに持ち込めません。AWSのライセンス込みAMI(Amazon Machine Image)を使うか、ボリュームライセンスをBYOL(Bring Your Own License)で持ち込む形になります。SQL Serverライセンスについても同様の確認が必要です。

運用スキルの転換

VMware管理(vCenter)のスキルとAWS管理のスキルは異なります。AWSマネジメントコンソール、CloudWatch(監視)、Systems Manager(運用管理)の基本的な操作は、移行前に担当者がキャッチアップしておく必要があります。

Azure移行との比較

VMwareからの移行先としてAWSとAzureを比較する際のポイントを整理します。

移行ツールの観点では、AWSのMGNもAzureのAzure Migrateも、いずれもVMwareからの移行に対応しており、機能的に大きな差はありません。

コストの観点では、同等スペックのVMを比較すると、AWSの方がRIの割引率が若干高い傾向があります。一方、Azureは既存のWindows ServerライセンスをAzure Hybrid Benefitで活用でき、Windows環境のランニングコストを抑えやすいです。

運用の親和性の観点では、Microsoft 365を利用している企業はAzure ADとの統合が容易なため、Azureの方が運用のシナジーが大きいです。AWSを選ぶ場合は、別途認証連携の設計が必要です。

既存のクラウド利用状況として、すでにAWSの他のサービス(S3、RDS等)を利用している場合はAWSへの統合が合理的です。

まとめ

VMwareからAWSへの移行は、MGNを活用することで比較的少ない手間で実現できます。特に中小企業にとっては、物理サーバーの管理負荷から解放される点と、リザーブドインスタンスやSavings Plansによるコスト最適化が大きなメリットです。

ただし、移行は技術的な作業だけでなく、ライセンスの確認、ネットワーク設計、運用体制の構築など、計画的に進めるべき項目が多くあります。段階的なアプローチで、リスクを抑えながら進めてください。

情シス365では、VMwareからAWSへの移行支援を含むITインフラのアウトソーシングを月額制でサポートしています。移行計画の策定から実行、移行後の運用まで、お気軽にご相談ください。

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