SIEMとは?ログ管理・脅威検知の仕組みと中小企業での現実的な活用法
SIEMとは
SIEM(Security Information and Event Management、シーム)は、組織内のあらゆるIT機器・サービスのログを一元的に収集・分析し、セキュリティ上の脅威を検知する仕組みです。
サーバー、ネットワーク機器、クラウドサービス、エンドポイント(PC)のログをSIEMに集約し、異常なパターン(不正ログイン試行、大量データの外部送信、深夜の管理者操作等)を自動検知してアラートを発します。
SIEMが解決する課題
個別のログ確認の限界として、M365のログ、ファイアウォールのログ、EDRのログを個別に確認していると、横断的な攻撃パターンを見逃します。SIEMは複数のログを相関分析し、単独では検知できない脅威を発見します。
インシデント調査の効率化として、セキュリティ事故が発生した際に「いつ、誰が、何をしたか」を追跡するにはログが不可欠です。SIEMがあれば、調査に必要なログを一箇所から検索できます。
主要なSIEM製品
Microsoft Sentinel はAzure上のクラウドネイティブSIEMで、M365との統合が最もスムーズです。従量課金制のため、ログ量が少ない中小企業でもコストを抑えて利用できます。Splunk は最も広く使われているSIEMですが、ライセンスコストが高く大企業向けです。Elastic Security はオープンソースベースで、コストを抑えたい場合の選択肢です。
中小企業にフルスケールSIEMは必要か
結論から言えば、多くの中小企業にはフルスケールのSIEM導入はコスト・運用負荷の面で現実的ではありません。SIEMは導入しただけでは機能せず、アラートの分析・対応を行うセキュリティアナリストが必要です。
SIEM導入で失敗する3つのパターン
1. ログを入れすぎて費用が膨らむ
クラウド型SIEMの費用は、取り込むログの量でほぼ決まります。 「念のため全部入れる」と、月額が想定の何倍にもなります。まず何を検知したいかを決め、そのために必要なログだけを取り込むのが正しい順序です。
2. チューニングされずアラートが洪水になる
初期状態では誤検知が大量に出ます。業務上の正常な動作を除外するチューニングを続けないと、数週間で誰も見なくなります。 導入作業より、この継続的な調整のほうが工数がかかります。
3. 見る人がいない
最も多い失敗です。アラートは出ているが、誰も判断できない状態では、導入前と実質的に変わりません。SIEMは「見る人」とセットでなければ機能しません。
SIEMが必要になるタイミング
次のいずれかに当てはまるなら、検討する価値があります。
- 取引先や親会社から、ログの一元管理を要件として求められた
- 規制・業界基準で、ログの長期保管と監査対応が必要
- 実際にインシデントを経験し、調査に必要なログが残っていなかった
- 監視対象がM365以外に広がった(オンプレのサーバー、ネットワーク機器、業務システム)
逆に、これらに当てはまらない段階では、後述のM365機能の活用で十分です。
中小企業の現実的なアプローチ
フルスケールSIEMの代わりに、M365のセキュリティ機能を最大限活用するアプローチが現実的です。
M365のセキュリティ機能として、Microsoft Defender for Business(EDR)でエンドポイントの脅威検知、Entra IDのサインインログでの不審なログイン監視、M365監査ログでのファイルアクセス・メール操作の追跡、セキュアスコアでのセキュリティ状態の可視化を活用します。
これらはM365のライセンスに含まれており、追加費用なしで利用できます。将来的にセキュリティ要件が高まった場合にMicrosoft Sentinelへステップアップする、という段階的アプローチが合理的です。
SIEMの前にやるべきこと
ログを集める前に、ログが残る状態を作ってください。 順序を逆にすると、集める対象がない状態でツールだけが動きます。
- 監査ログの記録が有効になっているか確認する — 無効のままだと、そもそも記録されていません
- 保持期間を把握する — ライセンスによって異なります。侵入から発覚まで数ヶ月かかることがあるため、期間が短いと肝心の記録が残りません
- ネットワーク機器のログ保管期間を確認する — VPN機器やファイアウォールのログは、数日で上書きされることがあります。侵入経路の特定に最も必要な記録が、最も早く消えます
- アラートの通知先を、実際に見る担当者にする — 既定では誰も開かない管理者用アドレスになっていることがあります
3番目は特に見落とされます。 高価なSIEMを導入しても、機器側で保管されていないログは収集できません。
まとめ
- クラウド型SIEMの費用は取り込むログの量でほぼ決まる。「念のため全部」で費用が膨らむ
- 何を検知したいかを決め、そのために必要なログだけを取り込む
- 初期状態では誤検知が大量に出る。チューニングを続けないと数週間で見なくなる
- 最も多い失敗は見る人がいないこと。SIEMは「見る人」とセットでなければ機能しない
- 検討のタイミングは、取引先の要件・規制対応・調査でログが足りなかった経験・監視対象の拡大
- 導入前に監査ログの有効化・保持期間の把握・機器側のログ保管・通知先を確認する
- VPN機器やファイアウォールのログは数日で消えることがある。SIEMがあっても収集できない
- 当面はM365標準機能(Defender、サインインログ、監査ログ、セキュアスコア)で足りる
SIEMはセキュリティ監視の理想形ですが、中小企業にはM365のセキュリティ機能の活用が現実的な第一歩です。M365の監査ログ・EDR・セキュアスコアを活用し、必要に応じてSentinelへ段階的に移行してください。
情シス365では、M365のセキュリティ機能を最大限活用したセキュリティ運用を代行しています。