Active Directoryとは?中小企業にも必要?わかりやすく解説
Active Directoryとは「社員名簿+鍵管理」のシステム
Active Directory(AD)は、Microsoftが提供する「ユーザーアカウントとアクセス権限を一元管理するシステム」です。わかりやすく言えば**「デジタルな社員名簿+各部屋の鍵管理システム」**です。
社員名簿の部分では「誰がこの会社に所属しているか」を管理します。鍵管理の部分では「その人がどのファイル・どのPCにアクセスしてよいか」を管理します。
ADがない環境では、PCごとにユーザーアカウントを作り、ファイルサーバーにも別のアカウントを作り……という状態になります。社員が10名なら何とかなりますが、50名を超えると入退社のたびに何箇所も設定して回る必要があり、消し忘れが発生します。
ADを使うと何ができるか
アカウントの一括管理。 社員のID・パスワードを1箇所で管理します。入社時に1つアカウントを作れば、社内のPC・ファイルサーバー・プリンタにその1つでログインできます。退職時も1箇所で無効化すれば、すべてのアクセスが止まります。
アクセス権限の制御。 「経理部のフォルダは経理部のメンバーだけが開ける」といった制御を、部署のグループ単位で設定できます。人事異動があってもグループを入れ替えるだけで済みます。
グループポリシーによるPC設定の統一。 スクリーンセーバーの時間、USBメモリの使用可否、パスワードの最小文字数といった設定を、全社のPCに一括で適用できます。1台ずつ設定して回る必要がなくなります。
中小企業にオンプレミスのADは必要か
従来のActive Directory(オンプレミス版)は、自社にサーバーを設置し、そのサーバーを維持管理する必要があります。 サーバー本体の購入費、Windows Serverのライセンス費、設置場所、停電対策、故障時の対応、OSのサポート期限に合わせた更新——中小企業にとってハードルの高い要素が揃っています。
結論から言えば、これから新規に構築するなら、オンプレミスのADは多くの中小企業にとって不要です。 クラウド版のMicrosoft Entra ID(旧Azure Active Directory)で代替できるためです。
Entra IDならすでに持っている
Entra IDはMicrosoft 365に付属しています。 M365を契約している企業は、追加のサーバーもソフトウェアも不要で、すでに利用可能な状態です。
つまりM365を使っている企業は、「ADを導入するかどうか」ではなく**「すでに持っているEntra IDをどこまで活用するか」**という論点になります。
Entra IDでできること
M365のアカウント管理。 入退社時のアカウント追加・削除を管理センターから行います。退職者のアカウントを無効化すれば、メール・Teams・SharePointへのアクセスがすべて止まります。
多要素認証(MFA)の全社適用。 パスワードだけの認証をやめ、認証アプリやセキュリティキーによる2要素目を要求できます。不正アクセス対策として最も効果が大きい設定です。
SSO(シングルサインオン)。 kintone、Salesforce、Boxといった外部のSaaSにも、Microsoftアカウント1つでログインできるようになります。パスワードの使い回しが減り、退職時のアカウント停止も一元化できます。
条件付きアクセス。 「社内ネットワークからは通常どおり、社外からのアクセス時は追加認証を要求する」「管理されていない端末からはファイルのダウンロードを禁止する」といった制御ができます。Business Premium以上のライセンスが必要です。
オンプレADとEntra IDの使い分け
| オンプレミスAD | Entra ID | |
|---|---|---|
| 設置場所 | 自社サーバー | クラウド(Microsoft) |
| 初期費用 | サーバー+ライセンス | M365に付属 |
| 得意なこと | 社内PC・ファイルサーバーの統制、グループポリシー | クラウドサービスへの認証、MFA、SSO |
| 苦手なこと | 社外からのアクセス、クラウド連携 | 社内PCの細かい設定制御(Intuneで代替) |
| 向く企業 | 社内サーバーと業務システムが多い | クラウド中心、テレワークあり |
オンプレADが依然として必要になるケースもあります。社内に業務システムのサーバーがあり、それがAD認証を前提にしている場合や、ファイルサーバーの権限管理を細かく行っている場合です。この場合は、オンプレADとEntra IDを連携させる「ハイブリッド構成」を取ります。
一方、すでにオンプレADを持っている企業が、クラウド移行を検討するケースも増えています。サーバーの更新時期が判断のタイミングになることが多く、更新費用をかけてオンプレを維持するか、Entra IDへ寄せるかの選択になります。
ADの「よくある落とし穴」
退職者のアカウントが残っている。 最も多い問題です。無効化のルールが決まっていない、あるいは退職の連絡が情シスに届かない運用になっていることが原因です。人事とIT部門の連携フローを決めてください。
管理者アカウントを全員で共用している。 誰が何をしたか追跡できなくなります。監査ログの意味がなくなるため、管理作業をする人ごとに管理者アカウントを分けます。
グループ設計が破綻している。 「部署」ではなく個人単位で権限を付与していると、人事異動のたびに設定作業が発生します。最初にグループ設計をしておくと、後の運用工数が大きく変わります。
ドメインコントローラーが1台しかない。 オンプレADの場合、この1台が故障すると全社員がログインできなくなります。冗長構成が取れていないケースは意外と多く、サーバー更新時に見直すべきポイントです。
まとめ
- Active Directoryは**「デジタル社員名簿+鍵管理システム」**。アカウントとアクセス権限を1箇所で管理する仕組み
- これから新規構築するなら、オンプレADは多くの中小企業に不要。クラウド版のEntra IDで代替できる
- M365を使っている企業は、すでにEntra IDを持っている。追加費用なしでMFA・SSO・条件付きアクセスが使える
- 社内の業務システムやファイルサーバーがAD認証前提なら、ハイブリッド構成が必要になる
- 最も多い運用上の問題は退職者アカウントの残存。人事とIT部門の連携フローを決めておく
- 権限は個人単位ではなくグループ単位で設計する。人事異動のたびの作業量が変わる
M365を使っている中小企業は、すでにEntra ID(クラウド版AD)を持っています。これを活用してMFA、SSO、条件付きアクセスを設定することで、追加費用なしでセキュリティを大幅に強化できます。
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