IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」を中小企業視点で徹底解説 ― 今年の注目ポイントと対策

IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)が毎年発表する「情報セキュリティ10大脅威」は、前年に社会的影響が大きかったセキュリティ事案をランキング形式で公表するものです。2026年版が公開され、組織編では引き続きランサムウェアが1位となりました。

この記事では、中小企業のIT担当者・経営者の視点で、2026年版の脅威ランキングを読み解き、限られたリソースの中で何を優先すべきかを整理します。

情報セキュリティ10大脅威 2026(組織編)概要

2026年版では、以下の脅威がランクインしています(順位はIPA公式発表に準拠)。

順位脅威前年順位詳細記事
1位ランサムウェアによる被害1位対応マニュアル
2位サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃2位委託先管理と対策
3位システムの脆弱性を突いた攻撃3位Windows Update管理
4位内部不正による情報漏えい等の被害4位インサイダーリスク管理
5位機密情報等を狙った標的型攻撃5位標的型攻撃の手口と防御策
6位リモートワーク等の環境を狙った攻撃6位テレワークとクラウド安全利用
7位地政学的リスクに起因するサイバー攻撃新規地政学的サイバーリスクの備え
8位分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)8位DDoS攻撃の対策ガイド
9位ビジネスメール詐欺(BEC)9位BEC対策:M365・GWS設定
10位不注意による情報漏えい等の被害7位メール誤送信対策

注目すべきは「地政学的リスクに起因するサイバー攻撃」の新規ランクインです。国家支援型の攻撃グループによるサプライチェーンを経由した攻撃が、中小企業にまで波及するケースが増えています。

10大脅威の各脅威を解説

1位:ランサムウェアによる被害

詳しくは → ランサムウェアに感染したらどうする? 中小企業のインシデント対応マニュアル

ランサムウェアは7年連続で1位です。2025年は中小企業を標的としたランサムウェア攻撃が前年比で約30%増加しました。

なぜ中小企業が狙われるのか:

  • 大企業と比べてセキュリティ対策が手薄
  • 身代金を払う可能性が高い(事業継続のため)
  • サプライチェーン攻撃の足がかりになる

今すぐ取るべき対策:

  • バックアップの3-2-1ルールを徹底する(3つのコピー、2種類のメディア、1つはオフサイト)
  • VPNやリモートデスクトップの認証を多要素認証(MFA)に変更する
  • OSとソフトウェアのアップデートを速やかに適用する
  • Microsoft 365のバックアップ戦略も確認しておく

2位:サプライチェーンの弱点を悪用した攻撃

詳しくは → 委託先管理とサプライチェーン対策

自社のセキュリティが万全でも、取引先や委託先が攻撃を受けると被害が波及します。2025年は大手自動車メーカーのサプライヤーがランサムウェア被害を受け、工場が停止する事例が続きました。

中小企業への影響:

  • 取引先から「セキュリティ対策状況の報告」を求められるケースが急増
  • SCS評価制度への準備が取引条件になりつつある
  • 自社がサプライチェーンの「最も弱い環節」になるリスク

今すぐ取るべき対策:

  • 委託先・取引先のセキュリティ状況を確認する仕組みを作る
  • 自社のセキュリティ対策状況を文書化しておく
  • 事業継続計画(BCP)にサイバー攻撃シナリオを追加する

3位:システムの脆弱性を突いた攻撃

詳しくは → 情シスのためのWindows Update管理ガイド

VPN機器やファイアウォールの既知の脆弱性を突いた攻撃が継続しています。特にFortinet、Cisco、Ivanti製品の脆弱性が悪用されるケースが目立ちます。

今すぐ取るべき対策:

  • ネットワーク機器のファームウェアを最新版に更新する
  • 使っていないVPNアカウントを無効化する
  • Windows Updateの管理を仕組み化する

4位:内部不正による情報漏えい

詳しくは → Microsoft Purview インサイダーリスクマネジメントで内部不正を検知

退職者による顧客情報の持ち出し、現職社員による機密情報の不正利用が増加しています。

今すぐ取るべき対策:

7位(新規):地政学的リスクに起因するサイバー攻撃

詳しくは → 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃 ― 中小企業が巻き込まれないための備え

国際情勢の緊張を背景に、国家支援型のサイバー攻撃グループが活発化しています。直接の標的ではなくても、サプライチェーンを経由して攻撃が波及する「巻き添え型」の被害に注意が必要です。

今すぐ取るべき対策:

  • JPCERT/CCやIPAの注意喚起を定期的に確認する
  • 海外拠点や海外取引先との通信経路を見直す
  • DNSフィルタリングやEDRの導入を検討する

5位:機密情報等を狙った標的型攻撃

詳しくは → 標的型攻撃(APT)とは ― 中小企業も狙われる手口と実践的な防御策

特定の組織を狙い撃ちにする標的型攻撃は、サプライチェーンの踏み台として中小企業が狙われるケースが増えています。取引先を装った精巧なメールで侵入し、数か月間潜伏して機密情報を窃取します。

今すぐ取るべき対策:

  • メールセキュリティ(Defender for Office 365 / GWSの高度なフィッシング保護)を有効化する
  • EDRを導入して、不審な振る舞いを検知する
  • 標的型メール訓練を定期的に実施する

6位:リモートワーク等の環境を狙った攻撃

詳しくは → テレワークとクラウド安全利用

テレワーク環境のVPN機器やリモートデスクトップの脆弱性を突いた攻撃が継続しています。自宅ネットワークのセキュリティの甘さも狙われます。

今すぐ取るべき対策:

  • VPN機器のファームウェアを最新に保つ
  • リモートデスクトップをインターネットに直接公開しない
  • ゼロトラストアーキテクチャの導入を検討する

8位:分散型サービス妨害攻撃(DDoS攻撃)

詳しくは → DDoS攻撃とは ― 中小企業のWebサイト・業務システムを守る対策ガイド

大量のアクセスでWebサイトやサービスをダウンさせるDDoS攻撃は、攻撃代行サービスの普及により中小企業も標的になっています。「攻撃を止めてほしければ身代金を払え」というランサムDDoSも増加中です。

今すぐ取るべき対策:

  • CDN(Cloudflare等)を導入する(無料プランでも基本的な防御が可能)
  • ISPのDDoS対策オプションを確認する
  • 攻撃を受けた場合の対応手順を事前に決めておく

9位:ビジネスメール詐欺(BEC)

詳しくは → ニセ社長詐欺とは? M365・GWSの設定で防ぐBEC対策

経営者や取引先になりすまし、偽の送金指示を出すビジネスメール詐欺(BEC)。1件あたりの被害額が大きく、中小企業では事業存続に関わるダメージになることもあります。

今すぐ取るべき対策:

  • 送金・振込先の変更は、メール以外の手段(電話等)で必ず確認する
  • Microsoft 365のなりすまし保護を有効化する
  • SPF, DKIM, DMARCを正しく設定する

10位:不注意による情報漏えい等の被害

詳しくは → メール誤送信対策:M365の標準機能でどこまで防げるか

メールの宛先間違い、ファイルの添付ミス、クラウドストレージの公開設定ミスなど、悪意のない「うっかりミス」による情報漏えいも10大脅威に入っています。

今すぐ取るべき対策:

  • メール送信の取り消し機能(送信遅延)を有効化する
  • DLPポリシーで機密情報の外部送信を検知・ブロックする
  • クラウドストレージの外部共有設定を定期的に監査する

10大脅威に共通する「基本対策」

個別の脅威に対応する前に、以下の基本対策が全体のリスクを大幅に下げます。

1. 多要素認証(MFA)の導入

10大脅威の多くは「認証情報の窃取」から始まります。MFAを導入するだけで、アカウント乗っ取りのリスクを99%以上削減できます。

  • Microsoft 365 / Google Workspace のMFAを必須化する
  • VPN接続にMFAを適用する
  • リモートデスクトップは直接公開せず、VPN経由+MFAにする

2. バックアップの確保と復旧テスト

ランサムウェア対策の最後の砦はバックアップです。ただし、バックアップが「ある」だけでは不十分で、「復旧できる」ことを定期的にテストする必要があります。

3. 従業員教育

フィッシングメール、ビジネスメール詐欺、ソーシャルエンジニアリングへの対応力は、技術的対策だけでは限界があります。セキュリティ研修プログラムを参考に、定期的な教育を実施しましょう。

4. 脆弱性管理

OS・ソフトウェア・ネットワーク機器のアップデートを速やかに適用する運用ルールを作ります。特にVPN機器やファイアウォールは攻撃者が最初に狙うポイントです。

5. インシデント対応計画

攻撃を100%防ぐことは不可能です。被害が発生した場合に「何を、誰が、どの順番で」対応するかを事前に決めておくことが重要です。ランサムウェアインシデント対応も参考にしてください。

中小企業のためのアクションプラン

「全部やらなければ」と思うと手が止まります。以下の優先順位で進めましょう。

今週中にやること(コストゼロ)

  1. Microsoft 365 / Google Workspace のMFAを全ユーザーに適用する
  2. 使っていないアカウントを棚卸しして無効化する
  3. VPN機器のファームウェアバージョンを確認する

1か月以内にやること

  1. バックアップの復旧テストを実施する
  2. 退職時のIT対応フローを文書化する
  3. 従業員向けフィッシングメール訓練を計画する

3か月以内にやること

  1. インシデント対応計画を策定する
  2. 取引先のセキュリティ状況確認の仕組みを構築する
  3. EDRの導入を検討する

まとめ

IPA「情報セキュリティ10大脅威 2026」は、ランサムウェアとサプライチェーン攻撃が引き続き上位を占め、新たに地政学的リスクがランクインしました。

中小企業にとって大切なのは「完璧な対策」ではなく「優先順位をつけて着実に進めること」です。MFAの導入、バックアップの確保、脆弱性管理の3つを基本として、段階的にセキュリティレベルを上げていきましょう。

自社のセキュリティ対策に不安がある方は、情シス365の無料相談をご活用ください。現状の課題整理と優先順位の提案を行います。

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