Microsoft 365とGoogle Workspaceのストレージ容量を徹底比較|100人・1,000人・10,000人で何TB使えるか
「Microsoft 365とGoogle Workspaceのどちらを選ぶか」を検討するとき、ライセンス料金や機能は比較されますが、意外と見落とされがちなのが実際に使えるストレージ容量です。両者は容量の定義方法(プール型/ユーザー個別型)も、上限の計算式もまったく異なるため、同じ「1TB/ユーザー」と書かれていても実体は大きく違います。
特に注意したいのが、Microsoft 365のSharePoint Online(組織で共有するファイル領域)はテナント全体で1つの上限が設定されている点です。「1TB + 10GB × ライセンスユーザー数」という式で計算されるため、1,000人規模でも11TB、10,000人規模でも101TBにしかなりません。組織全体でのファイル共有が中心の大規模組織では、ここがあっという間にボトルネックになります。
本記事では、Microsoft 365(SharePoint Online + OneDrive for Business)とGoogle Workspace(Google Drive)の容量計算ルールを整理したうえで、100人・1,000人・10,000人規模で「組織で共有できるストレージ」と「個人で使えるストレージ」がどう変わるかを具体的に試算します。結論として、大規模組織ではGWSの方が組織共有領域を大きく取れる構造になっており、選択肢として検討する価値があります。
容量計算の前提:M365とGWSの設計思想の違い
ストレージ容量を比較する前に、両サービスの設計思想を整理します。ここを理解しないと、表の数字だけを見比べても本質を見誤ります。
Microsoft 365:「組織ストレージ」と「個人ストレージ」が分かれている
Microsoft 365のクラウドストレージは、用途で大きく2系統に分かれます。
- SharePoint Online(組織ストレージ):テナント全体で共有されるプール型。「1TB + 10GB × ライセンスユーザー数」で計算される。Teamsのチームファイル・SharePointサイト・社内ポータルはすべてここに格納される
- OneDrive for Business(個人ストレージ):1ユーザーあたりに割り当てられる個別型。プランによって1TB〜5TBまで(E3/E5は5TBまで管理者が拡張可能)
重要なのは、OneDriveは個人作業用の領域であり、組織で共有するファイルの保管先ではないという点です。OneDriveを介してファイル共有はできますが、退職者のライセンス削除でデータが消えるリスクがあり、組織のナレッジ管理基盤としては設計されていません。組織横断で共有するファイルはSharePoint Onlineに置くのが原則です。
つまりMicrosoft 365では、組織で共有できる容量の上限はSharePoint Onlineの容量上限と等しいということになります。
Google Workspace:すべて1つの「組織プール」に統合されている
Google Workspaceのストレージは、プランで規定された1ユーザーあたりの容量×ライセンス数を、組織全体で1つのプールとして利用します。たとえばBusiness Standard(2TB/ユーザー)を100ユーザー契約すると、組織全体で200TBのプールが使えます。
このプールはGoogle Drive(マイドライブ+共有ドライブ)・Gmail・Google フォトで共有されます。マイドライブ(個人領域)に偏って使うことも、共有ドライブ(組織のチーム領域)に集中投下することもできます。
つまりGWSでは、個人ストレージと組織ストレージの境目がなく、必要な方に容量を回せる構造になっています。
Exchange Onlineは別枠(参考)
Microsoft 365のExchange Online(メール)は、SharePoint/OneDriveとは別枠で、ユーザーあたり50GB(Business Basic)〜100GB(Business Standard以上)のメールボックスが付与されます。本記事ではファイルストレージ(SharePoint・OneDrive・Google Drive)に焦点を絞ります。
Microsoft 365:プラン別ストレージ容量
SharePoint Onlineの容量計算式
テナント全体のSharePoint容量は以下の式で決まります。
SharePointテナント容量 = 1TB +(10GB × ライセンスユーザー数)
ユーザー数が増えても、1ユーザーあたりわずか10GBずつしか増えません。サイトごとの上限は25TBまで割り当て可能ですが、テナント全体の上限を超えることはできません。
OneDrive for Businessの容量
プランごとに以下のように決まります。
| プラン | 標準容量 | 拡張上限 |
|---|---|---|
| Business Basic | 1TB/ユーザー | 1TB |
| Business Standard | 1TB/ユーザー | 1TB |
| Business Premium | 1TB/ユーザー | 1TB |
| Apps for Business | 1TB/ユーザー | 1TB |
| Microsoft 365 E1 | 1TB/ユーザー | 1TB |
| Microsoft 365 E3 | 1TB/ユーザー | 5TB(5ユーザー以上で管理者が拡張可能) |
| Microsoft 365 E5 | 1TB/ユーザー | 5TB(5ユーザー以上で管理者が拡張可能) |
| F3(Frontline) | 2GB/ユーザー | 2GB |
E3・E5プランでは、組織のユーザー数が5以上の場合、管理者がSharePoint管理センターでOneDriveの既定容量を最大5TBまで引き上げられます。さらに5TBを超える需要がある場合、Microsoftサポート経由で個別ユーザーに最大25TBのサイトを割り当てる手続きも可能です(実質的にE5の特殊運用枠)。
Google Workspace:プラン別ストレージ容量
Google Workspaceのストレージは、すべて組織プール型です。
| プラン | プール単価 | 契約可能ユーザー数 |
|---|---|---|
| Business Starter | 30GB/ユーザー | 1〜299人 |
| Business Standard | 2TB/ユーザー | 1〜299人 |
| Business Plus | 5TB/ユーザー | 1〜299人 |
| Enterprise Standard | 5TB/ユーザー(追加申請可) | 制限なし |
| Enterprise Plus | 5TB/ユーザー(追加申請可) | 制限なし |
| Frontline Starter | 2GB/ユーザー | 制限なし |
| Frontline Standard | 5GB/ユーザー | 制限なし |
重要な制約として、Business系(Starter/Standard/Plus)はテナントあたり最大299ユーザーまでしか契約できません。300ユーザー以上の組織はEnterprise系プランが必須になります。
Enterprise系のストレージは「5TB/ユーザー」が基本ですが、業務上の必要性を示せばGoogle Workspaceサポート経由で追加申請ができ、実質的に必要量を確保できます。
100ユーザー規模の比較
ここから、100人・1,000人・10,000人の3つのモデルケースで具体的に計算します。比較表は「組織ストレージ(M365のSharePoint)」「個人ストレージ(M365のOneDrive)」「組織全体プール(GWSのDriveプール)」の3軸で整理します。
100ユーザー:Microsoft 365
| プラン | 組織ストレージ(SharePoint Online) | 個人ストレージ(OneDrive・1ユーザー) |
|---|---|---|
| M365 Business Standard | 1TB + 10GB×100 = 2TB | 1TB |
| M365 Business Premium | 1TB + 10GB×100 = 2TB | 1TB |
100ユーザー時点でも、組織で共有できる領域はわずか2TBしかありません。「全部署の共有ファイル」「Teamsの全チームのファイル」「社内ポータルの掲載資料」をすべてここに収める必要があります。
100ユーザー:Google Workspace
| プラン | 組織全体プール(Drive+Gmail+フォト合計) |
|---|---|
| GWS Business Starter | 30GB×100 = 3TB |
| GWS Business Standard | 2TB×100 = 200TB |
| GWS Business Plus | 5TB×100 = 500TB |
GWSの場合、プールの中で「共有ドライブ」「マイドライブ」「Gmail」を自由に按分できます。Business Plusなら500TBを組織全体で柔軟に使えるため、組織共有領域として使える容量は実質的にM365のSharePoint 2TBの250倍です。
100ユーザー時のポイント
- 組織共有領域はGWSが圧倒的:M365 SharePointの2TBに対し、GWS Business Standardでも200TB(100倍)、Business Plusで500TB(250倍)
- 個人領域はM365が有利:OneDriveは1人あたり1TBが確保される(他人と取り合わない)
- Business Starterは要注意:30GB/ユーザーは業務利用としては不足しがち。Standard以上が現実解
100人規模では、M365でもSharePointの2TBが組織ナレッジを収めきれないほど狭くはありませんが、動画ファイル・大規模プロジェクトの設計資料・部門アーカイブを積極的に蓄積する組織だと、数年で逼迫する可能性があります。
1,000ユーザー規模の比較
1,000人を超えるとGWSのBusiness系は契約できなくなるため、Enterprise系のみを掲載します。M365も、エンタープライズ運用ならE3/E5が現実的な選択肢です。
1,000ユーザー:Microsoft 365
| プラン | 組織ストレージ(SharePoint Online) | 個人ストレージ(OneDrive・1ユーザー) |
|---|---|---|
| M365 E3(標準) | 1TB + 10GB×1,000 = 11TB | 1TB |
| M365 E3(OneDrive拡張) | 1TB + 10GB×1,000 = 11TB | 5TB |
| M365 E5(OneDrive拡張) | 1TB + 10GB×1,000 = 11TB | 5TB |
OneDriveは5TBまで拡張できる一方、SharePoint(組織ストレージ)は11TBで固定です。1,000人規模でこの容量は明らかに狭く、「組織全体で共有するファイル領域として何TB必要か」を冷静に試算する必要があります。
参考として、ファイルサーバーから移行する企業の感覚値で、1人あたりの共有領域使用量はおよそ20〜100GBになることが多く、1,000人だと20〜100TB相当の組織共有データを抱えているケースが少なくありません。SharePointの11TBはこれを下回ります。
1,000ユーザー:Google Workspace
| プラン | 組織全体プール(Drive+Gmail+フォト合計) |
|---|---|
| GWS Enterprise Standard | 5TB×1,000 = 5,000TB(約5PB) ※追加申請可 |
| GWS Enterprise Plus | 5TB×1,000 = 5,000TB(約5PB) ※追加申請可 |
GWS Enterpriseでは、組織プールが5PB(5,000TB)。これをすべて共有ドライブに振ることも、必要に応じてマイドライブに割り当てることも自由です。M365のSharePoint 11TBに対し、約450倍の組織共有容量が確保できることになります。
1,000ユーザー時のポイント
- M365のSharePointは11TBで頭打ち:組織共有領域の上限が明確に存在する
- GWSは約5PBが自由に使える:共有ドライブで全社的なファイル共有基盤を構築可能
- M365のOneDrive 5,000TB(5PB)は「個人領域」:組織のナレッジ管理基盤としては使えない
- Microsoftサポート経由でSharePointの追加購入は可能だが有償:追加容量プラン(SharePoint Storage)を別途購入する必要があり、コストが累積する
1,000人規模で、ファイル共有を全社的に行いたい組織にとっては、SharePoint Onlineの容量上限が事実上のサービス選定ポイントになります。組織共有データが10TB前後で収まる文化なら問題ありませんが、CAD/動画/設計データ/医用画像など重いファイルを扱う業種ではGWSの優位性が際立ちます。
10,000ユーザー規模の比較
10,000ユーザー:Microsoft 365
| プラン | 組織ストレージ(SharePoint Online) | 個人ストレージ(OneDrive・1ユーザー) |
|---|---|---|
| M365 E3(標準) | 1TB + 10GB×10,000 = 101TB | 1TB |
| M365 E3(OneDrive拡張) | 1TB + 10GB×10,000 = 101TB | 5TB |
| M365 E5(OneDrive拡張) | 1TB + 10GB×10,000 = 101TB | 5TB |
10,000人規模でも、組織ストレージは101TBにとどまります。1人あたりに割り当てると約10GB/ユーザーで、ファイルサーバー感覚で考えると圧倒的に不足する水準です。
10,000人規模の組織が抱える共有データは、業種にもよりますが100TB〜数PBに達することが珍しくありません。SharePointの101TBではほぼ確実に足りず、Microsoft 365のSharePoint追加ストレージ(有償オプション、1GBあたり月額0.2ドル程度)を継続購入する必要が出てきます。仮に1PB(1,000TB)追加すると、追加分だけで月額20万円超のコスト増になります。
10,000ユーザー:Google Workspace
| プラン | 組織全体プール(Drive+Gmail+フォト合計) |
|---|---|
| GWS Enterprise Standard | 5TB×10,000 = 50,000TB(約50PB) ※追加申請可 |
| GWS Enterprise Plus | 5TB×10,000 = 50,000TB(約50PB) ※追加申請可 |
GWS Enterpriseなら、追加コストなしで50PBの組織プールが確保できます。SharePointの101TBに対して約500倍です。さらに業務上の必要性を示せばGoogleサポートに追加申請も可能なため、容量制約に悩むことがほぼなくなります。
10,000ユーザー時のポイント
- M365のSharePointは101TBで打ち止め:10,000人規模の組織共有容量としては明確に不足
- 追加購入で対応可能だが、コストが嵩む:SharePoint追加ストレージは1TBあたり月額数万円
- GWSは追加コストなしで50PB:1,000人規模時の優位性がさらに拡大
- 大規模ファイル共有を前提とするならGWSが優位:製造業の設計データ、メディア業の映像素材、医療機関の画像データなど
規模ごとの比較サマリー:組織で共有できる容量
主要プランの「組織で共有できるストレージ容量」だけを抜き出すと、M365とGWSの差が明確に見えてきます。
| プラン | 100人 | 1,000人 | 10,000人 |
|---|---|---|---|
| M365 Business Standard(組織=SharePoint) | 2TB | — | — |
| M365 E3/E5(組織=SharePoint) | — | 11TB | 101TB |
| GWS Business Standard(組織プール) | 200TB | — | — |
| GWS Business Plus(組織プール) | 500TB | — | — |
| GWS Enterprise Standard/Plus(組織プール) | — | 約5PB(拡張可) | 約50PB(拡張可) |
PB(ペタバイト)=1,024TB ≈ 1,000TB。本記事では分かりやすさのため1PB ≈ 1,000TBで計算しています。
「組織で共有する容量」の観点では、全規模でGWSが優位になります。特に1,000人を超える規模では、M365 SharePointの容量制約が顕著になり、追加購入を継続するコストがGWS Enterpriseの月額ライセンス料金と逆転するケースも出てきます。
大規模組織でGWSが選択肢になる3つの理由
このように、容量の観点から見ると、大規模組織ほどGWSが「現実的な選択肢」として浮上します。理由は3つあります。
1. SharePointの容量計算式が大規模組織に不利
SharePointの「1TB + 10GB × ユーザー数」は、1ユーザーあたりわずか10GBの増加にとどまります。10,000人でも101TBにしかならず、組織共有容量としては明らかに少ない設計です。一方GWSは「5TB/ユーザー × ユーザー数」で計算されるため、規模が大きくなるほどプールが大きく拡大します。
2. 共有ドライブの存在で「個人と組織」の境目が消える
GWSの共有ドライブ(Shared Drive)は、ファイルの所有権が組織に帰属する形式の領域です。退職者のライセンス削除で消えることもなく、組織のナレッジ基盤として使えます。プール内で必要なだけ共有ドライブに容量を回せるため、組織共有量に上限を感じにくい設計です。
3. 追加容量のコストが嵩みにくい
M365でSharePointの追加容量を購入する場合、SharePoint Storage(1GBあたり月額0.2ドル程度)を継続購入する必要があります。10,000人規模で1PB追加すると、追加分だけで年間数百万円規模のコストになります。GWS Enterpriseなら基本ライセンス内で5PBが含まれており、追加申請でさらに拡張も可能です。
ただし、容量だけでサービスを選ぶことは推奨しません。M365にはExcel/Word/PowerPointやTeams、Microsoft Purview等のセキュリティ機能など、容量以外の強みが多数あります。容量制約が顕在化している組織でも、「現状のSharePoint利用量はどれくらいか」「将来何TBに伸びるか」を試算したうえで判断することが重要です。
ストレージ運用で見落としやすい3つの落とし穴
1. SharePointのサイト上限25TBに注意(M365)
テナント全体の容量が潤沢でも、1つのSharePointサイト(例:「営業部サイト」)に25TBという上限があります。Teamsのチームファイル、社内ポータル、部門別共有領域などをひとつのサイトに集約すると、テナント容量より先にサイト上限に到達するケースがあります。
2. GWSのプール枯渇は全サービスに波及
Google Workspaceのプールが枯渇すると、DriveだけでなくGmailの受信もブロックされます。容量管理を怠ると、ある日突然メールが届かなくなる事故が起きます。管理コンソールの「ストレージ」セクションを定期的に監視してください。
3. ライセンス削除=OneDrive/マイドライブも削除(保持ポリシー対応必須)
退職者のライセンスを削除すると、OneDriveやマイドライブのデータも一定期間後に消失します。M365は既定で30日、設定変更で最大10年まで保持可能。GWSも同様に、ライセンス解除前に「データを別ユーザーに移管」または「Vault(Enterprise系のみ)で保管」が必要です。組織共有はSharePoint Online(M365)/共有ドライブ(GWS)に置いておくのが原則です。
まとめ:規模で変わる選定軸
最後に、規模別の選定軸を整理します。
- 100人規模:M365のSharePoint 2TBで足りる組織なら、Office製品との親和性でM365が有力。動画・設計データなど重いファイルを扱う組織はGWS Business Plus(500TB)が魅力
- 1,000人規模:組織共有データが10TBに収まるならM365 E3で十分。それを超える場合は、SharePointの追加購入コストとGWS Enterpriseの月額単価を比較したうえで判断
- 10,000人規模:SharePointの101TBではほぼ確実に足りない。SharePoint追加ストレージの累積コストを試算し、GWS Enterpriseとの総コスト比較を行うべき
容量比較だけでサービスを選ぶことは推奨しません。実際にはセキュリティ機能、コンプライアンス対応、Teams/Meetの利用頻度、業務アプリ(Excel/Sheets)の選好、SSO/IDの統合などの総合判断になります。ただし、大規模組織でファイル共有が業務の中心にある場合は、GWSも有力な選択肢として比較検討する価値があります。
情シス365では、Microsoft 365とGoogle Workspaceの選定・移行・併用設計をご支援しています。「SharePointの容量が逼迫しているがGWSに乗り換えるべきか」「両方契約している現状を整理したい」といったご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。