オフィスのネットワークが遅い・つながらない時の切り分け手順|情シスのトラブルシューティング
「ネットが遅いんですけど」「メールが送れません」「Teamsがつながりません」――情シスに寄せられる問い合わせで最も多いのが、ネットワークに関するトラブルです。
厄介なのは、「ネットが遅い」の原因が物理的なケーブル断線からSaaS側の障害まで多岐にわたることです。闇雲に調べると時間がかかるため、OSI参照モデルに沿った5段階の切り分け手順を身につけておくと、効率的に原因を特定できます。
ネットワーク障害の原因切り分けは、下の層(物理層)から順に確認するのが原則です。上位層の問題に見えても、実は物理層の故障が原因だったというケースは少なくありません。
Layer 1:物理層の確認
最初に確認すべきは物理的な接続です。
確認ポイント:
- LANケーブルが抜けていないか、断線していないか
- スイッチのポートランプは正常に点灯・点滅しているか(リンクアップしているか)
- PoE給電のAP(アクセスポイント)が電力不足で再起動を繰り返していないか
- 壁面のLANジャックからパッチパネルまでの配線に問題がないか
ケーブルの差し替えや別ポートへの接続で切り分けます。経年劣化したCat5ケーブルはギガビット通信でエラーが頻発する原因になります。
Layer 2:データリンク層(スイッチ・VLAN)
物理層に問題がなければ、次はスイッチとVLANの設定を確認します。
確認ポイント:
- スイッチのループ検出(STPのステータス確認)。ループはネットワーク全体を不安定にします
- VLAN設定のミス。端末が正しいVLANに所属しているか
- MACアドレステーブルの溢れ。小規模スイッチでMAC学習数の上限に達していないか
arp -a
同一セグメントの端末のMACアドレスが正しく解決されているかを確認します。重複するMACアドレスがある場合は、ループまたはMAC spoofingの可能性があります。
Layer 3:ネットワーク層(IP・ルーティング)
IP通信が正常かを確認します。
確認ポイント:
- IPアドレスの重複。同一IPが2台の端末に割り当てられるとどちらも通信不安定になります
- DHCPプールの枯渇。リース可能なIPアドレスが残っていない状態です
- デフォルトゲートウェイの設定ミスまたはゲートウェイ機器のダウン
- ルーティングテーブルの異常
確認コマンド:
ipconfig /all
ping <デフォルトゲートウェイのIP>
ping <社内サーバーのIP>
tracert 8.8.8.8
ipconfig /allでIPアドレス、サブネットマスク、デフォルトゲートウェイ、DNSサーバーが正しいことを確認します。ゲートウェイへのpingが通らない場合は、L1〜L2の問題か、ゲートウェイ機器自体の障害です。tracertでどのホップで遅延や断絶が発生しているかを特定できます。
Layer 4-5:DNS・名前解決
IPレベルでは通信できるのに、Webサイトやサービスにアクセスできない場合は、DNSの問題を疑います。
確認ポイント:
- DNSサーバーへの疎通確認
- 名前解決が正常にできるか
- DNSキャッシュに古い情報が残っていないか
- 社内DNS(AD統合DNS)と外部DNS(ISPやGoogle DNS)のどちらに問題があるか
確認コマンド:
nslookup www.google.com
nslookup <社内サーバー名>
ipconfig /flushdns
nslookup www.google.com 8.8.8.8
nslookupで社内DNSサーバー経由の名前解決が失敗し、Google DNS(8.8.8.8)経由では成功する場合は、社内DNSサーバーの障害です。逆に、どちらでも失敗する場合はインターネット接続自体に問題があります。
Layer 7:アプリケーション層
ネットワーク自体は正常でも、特定のサービスだけ遅い・使えない場合があります。
確認ポイント:
- Microsoft 365の障害。Microsoft 365 Service Healthで確認
- ISP(インターネットサービスプロバイダ)の障害。プロバイダのステータスページを確認
- 帯域の飽和。大容量ファイルのアップロードやWindows Updateの同時実行で帯域を使い切っていないか
- QoS未設定によるTeams会議の品質低下
特定のSaaSだけ遅い場合はそのサービスの障害情報を確認し、帯域飽和が疑われる場合はルーターやUTMのトラフィックモニタリング機能で確認しましょう。
よくある原因ランキング
中小企業のネットワークトラブルで多い原因を頻度順に整理します。
| 順位 | 原因 | 特徴 |
|---|---|---|
| 1位 | ISP障害・回線障害 | 全社員が同時にインターネット接続不可。社内通信は正常 |
| 2位 | DHCP枯渇 | 新しく接続した端末だけIPが取得できない。既存端末は正常 |
| 3位 | DNS障害 | IPアドレス直打ちでは通信可能。名前解決だけ失敗 |
| 4位 | Wi-Fi干渉・電波問題 | Wi-Fi接続の端末だけ不安定。有線接続に切り替えると改善 |
| 5位 | SaaS側の障害 | 特定のサービスだけ使えない。他のWebサイトは正常にアクセス可能 |
効率的な切り分けのコツ
トラブル報告を受けたら、まず以下の3つの質問で原因の範囲を絞り込みましょう。
- 影響範囲は?「全員か、特定のフロアか、特定の1人か」で物理的な原因かソフト的な原因かを切り分けます
- いつからか?「今朝から」「さっきまで使えていた」「昨日の夜から」で、変更作業やISP障害との関連を推測します
- 何ができて何ができないか?「インターネットは使えるが社内サーバーにアクセスできない」ならルーティングやDNSの問題、「すべてつながらない」なら物理層やDHCPの問題が疑われます
ネットワーク障害の切り分けには経験と知識が求められます。「トラブル対応に追われて本来の業務が進まない」という状況であれば、情シス365のアウトソーシングサービスをご検討ください。障害対応の一次切り分けから恒久対策の提案まで対応します。