社内SEが足りない企業の問題|人材不足が引き起こす5つのリスクと対策

社内SEの不足は「IT部門の問題」ではなく「経営問題」

社内SE(IT担当者)の不足を「IT部門が何とかすべき問題」と捉えている経営者がいますが、これは誤りです。社内SEの不足が引き起こすリスクは、セキュリティ事故による事業停止、業務効率の低下、M&Aの失敗など、いずれも経営に直結する問題です。

問題1:セキュリティ対策の放置

社内SEが不足していると、セキュリティ対策に手が回りません。MFA未導入、パッチ未適用、バックアップ未検証という「無防備」な状態が放置されます。ランサムウェアの被害が中小企業に拡大する中、この状態は「事故が起きるのを待っている」のと同じです。

被害額は中小企業でも数百万〜数千万円に達し、復旧に数週間〜数ヶ月を要します。事業継続が困難になるケースも報告されています。

問題2:ITトラブル時の業務停止

「ネットがつながらない」「メールが送れない」「業務システムが動かない」——社内SEがいなければ、これらのトラブル解決に何時間もかかります。その間、社員全員の業務が止まります。50人の会社で半日業務停止すれば、人件費だけで数十万円の損失です。

問題3:属人化による退職リスク

社内SEが1名しかいない場合、その人の退職は致命的です。IT環境のパスワード、設定内容、ベンダーとの契約状況がすべて失われます。後任の採用にも3〜6ヶ月かかるため、その間IT環境は「無管理」状態になります。

問題4:ITコストの増大

管理する人がいなければ、使われていないSaaSの月額料金が引き落とされ続け、退職者のライセンスが有料のまま残り、過剰スペックの回線契約が見直されません。年間数十万〜百万円規模の無駄が発生します。

問題5:DX・IT活用の遅延

社内SEが日常のトラブル対応に追われ、新しいツールの導入やDX推進に手が回りません。競合他社がITを活用して業務効率を上げている間に、自社は取り残されるリスクがあります。

不足しているかを判断する7つの兆候

「うちは足りているのか」を判断する材料です。3つ以上当てはまるなら、すでに不足しています。

  1. 管理者アカウントのパスワードを、1人しか知らない
  2. バックアップから復元したことが、この1年で一度もない
  3. PC以外の機器(複合機、NAS、ルーター、UTM)の更新状況を誰も把握していない
  4. 退職者のアカウントが残っていないかを、確認する仕組みがない
  5. IT関連の契約一覧が、どこにもない
  6. 「詳しい人」が休むと、IT関連の判断が止まる
  7. 新しいツールの導入検討が、半年以上進んでいない

1と2は、実際に事故が起きたときの被害を直接左右します。 ここが空いているなら、他より優先して手を打ってください。

経営が気づくのは、たいてい手遅れになってから

社内SEの不足は、日常の中では表面化しません。次のいずれかが起きて初めて認識されます。

  • 担当者が退職した — パスワード、設定、契約状況が同時に失われます
  • セキュリティ事故が起きた — 「なぜ対策していなかったのか」が問われます
  • 取引先からチェックシートが届いた — 回答できない項目が並びます
  • M&Aや上場準備が始まった — IT資産の一覧すら出せない状態が露見します

いずれも、起きてから対処すると費用も時間も跳ね上がります。 平時に体制を整えるほうが、結果的に安く済みます。

不足のコストを見積もる

経営判断の材料として、現状のコストを数字にしてください。

項目見積もり方
業務停止の損失社員数 × 平均時給 × 停止時間。年間の発生回数を掛ける
兼務者の機会損失IT対応に使っている時間 × 本来業務の価値
無駄なIT費用使われていないSaaS、退職者分のライセンス、過剰な回線契約
事故時の想定損失復旧費用+停止期間の売上+対外対応の工数

3番目は棚卸しをすればすぐ出ます。 削減額が明確になると、体制整備の議論を進めやすくなります。

採用だけが解決策ではない

「社内SEを採用すれば解決」と考えがちですが、現実には以下の壁があります。IT人材は売り手市場で中小企業の給与水準では応募が来ない、採用できても1名では属人化の問題は解消しない、採用から戦力化まで半年以上かかるという問題です。

現実的な3つの対策

第一にアウトソーシングの活用です。社内SEの業務の全部または一部を外部の専門チームに委託します。月額12万円程度から利用でき、チーム体制のため属人化リスクもありません。最も即効性が高い対策です。

第二にツールによる自動化です。Power AutomateやIntuneを活用し、定型業務(アカウント管理、パッチ適用等)を自動化します。人に頼らない運用の仕組みを作ります。

第三にドキュメント化の徹底です。IT環境の構成図、手順書、パスワード台帳を整備し、特定の個人に依存しない体制を作ります。

着手する順序

3つの対策を同時に進める必要はありません。次の順が現実的です。

  1. ドキュメント化から始める — 管理者アカウントの所在、契約一覧、ネットワーク構成。外注するにも、まず現状が分からなければ見積もりが出ません
  2. 止められない業務を外注する — 入退社対応、ヘルプデスク、セキュリティ運用。期限があり、遅れると業務が止まるものから
  3. 自動化は後 — 対象が固まってからのほうが、作り直しが減ります

1を飛ばして外注すると、委託先に依存する構造ができます。 設定内容も契約情報も外部にしかない状態は、実質的なロックインです。

外注するときに社内へ残すもの

丸投げは、意思決定まで外部に委ねることになります。 次は社内に残してください。

  • 投資判断と方針決定 — 何にいくらかけるか
  • 管理者アカウントの保持 — ベンダーのアカウントで管理されている状態は避ける
  • 契約情報と設定情報の写し — 委託先が変わっても引き継げるように
  • 窓口担当1名 — IT知識は不要。判断を上げる先が決まっていることが重要です

契約時に「終了時に何を引き継げるか」を必ず確認してください。 ここが曖昧な事業者は避けるべきです。

まとめ

  • 不足の兆候は7項目。特に管理者パスワードの属人化復元テスト未実施は事故時の被害を直接左右する
  • 経営が気づくのは退職・事故・チェックシート・M&Aのいずれかが起きてから。対処が遅いほど高くつく
  • コストは業務停止・兼務者の機会損失・無駄なIT費用・事故時の想定損失で見積もる
  • 無駄なIT費用は棚卸しですぐ出る。削減額が議論を進めやすくする
  • 着手順はドキュメント化 → 止められない業務の外注 → 自動化
  • ドキュメント化を飛ばして外注すると、委託先に依存する構造ができる
  • 社内に残すのは投資判断・管理者アカウント・契約と設定情報の写し・窓口1名
  • 契約時に終了時に何を引き継げるかを必ず確認する

社内SEの不足は採用だけでは解決しません。アウトソーシング・自動化・ドキュメント化の3つを組み合わせて、持続可能なIT運用体制を構築してください。

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