Copilot+ PC(AI PC)企業導入ガイド — NPU搭載PCの選定・展開・管理
Copilot+ PCとは
Copilot+ PCは、Microsoftが定義するAI処理に最適化されたWindows PCの新カテゴリです。従来のPCとの最大の違いは、NPU(Neural Processing Unit)と呼ばれるAI専用プロセッサを搭載している点です。
NPUはCPUやGPUとは異なり、AIの推論処理(パターン認識、自然言語処理、画像解析等)に特化した演算ユニットです。Copilot+ PCの認定要件として、NPU性能が40 TOPS(Tera Operations Per Second)以上であることが求められます。
2026年4月現在、主要なNPU搭載プロセッサには、Qualcomm Snapdragon X Elite/Plus、Intel Core Ultra(Series 2)、AMD Ryzen AI 300シリーズがあります。
なぜ企業がCopilot+ PCを検討すべきか
Windows Copilotのローカル処理
Copilot+ PCでは、一部のAI機能がクラウドを経由せずデバイス上で動作します。テキスト要約、画像認識、音声文字起こしなどの処理がローカルで完結するため、機密データをクラウドに送信せずにAI機能を活用できます。
特に、社外秘の文書を扱う部署(法務、人事、経営企画等)では、ローカルAI処理のメリットが大きくなります。
バッテリー駆動時間の向上
NPUがAI処理を担当することで、CPUとGPUの負荷が軽減されます。結果として、AI機能を使いながらもバッテリー駆動時間が従来機より向上しています。テレワークやモバイルワークが多い企業では、実用上の恩恵があります。
2027年のWindows 10 EOS対応
Windows 10の延長サポートは2025年10月に終了しています。ESU(Extended Security Updates)で延命している企業も、2026〜2027年度にはWindows 11対応PCへの入替えが不可避です。どうせ入替えるなら、AI対応のCopilot+ PCを選定することで、今後3〜5年の業務効率化に備えられます。
選定基準:何を基準に選ぶか
プロセッサの選択
| プロセッサ | NPU性能 | 特徴 | 推奨用途 |
|---|---|---|---|
| Snapdragon X Elite | 45 TOPS | ARM互換、バッテリー最長 | モバイルワーク重視 |
| Snapdragon X Plus | 45 TOPS | Eliteの廉価版 | コスト重視のモバイル |
| Intel Core Ultra (Series 2) | 48 TOPS | x86互換、既存アプリ互換性高 | 社内アプリが多い環境 |
| AMD Ryzen AI 300 | 50 TOPS | NPU性能最高、コスパ良 | 汎用・コスト重視 |
ARM互換のSnapdragon機は、バッテリー駆動時間で優位ですが、x86専用アプリ(古い業務ソフト、VPNクライアントの一部、ドライバ未対応の周辺機器)が動作しない場合があります。社内で利用しているアプリの互換性を事前に検証してください。
既存のx86アプリ資産が多い企業は、Intel Core UltraまたはAMD Ryzen AI 300を選択するのが安全です。
メモリとストレージ
Copilot+ PCの認定要件として、メモリ16GB以上、ストレージ256GB以上が必須です。企業利用では、メモリ16GB・SSD 512GBを最低ラインとし、開発者やデータ分析担当者には32GB以上を推奨します。
メーカー・モデルの選定
法人向けサポート体制(翌営業日オンサイト修理、故障時の代替機提供等)を提供しているメーカーを選びましょう。主要な選択肢として、Lenovo ThinkPad T/Xシリーズ、Dell Latitude、HP EliteBookが挙げられます。
Surface Proシリーズは、Copilot+ PC対応モデルが充実していますが、修理対応がセンドバック(引き取り修理)のみのため、ダウンタイムを許容できるかを確認してください。
Intune展開のポイント
Windows Autopilotとの連携
Copilot+ PCはWindows Autopilotに対応しており、IT担当者がPCに触れることなくキッティングを完了できます。メーカーからの出荷時にAutopilotデバイスとして登録し、ユーザーが電源を入れてEntra IDでサインインするだけで、Intune経由で必要なアプリ・設定・ポリシーが自動適用されます。
NPU関連のポリシー設定
IntuneのデバイスプロファイルでNPU関連の設定を管理できます。NPUの利用可否をアプリ単位で制御するポリシー、ローカルAI機能の有効化/無効化、AI処理のテレメトリデータ送信の制御など、セキュリティ要件に応じた設定を事前に定義しておきましょう。
Recall機能のセキュリティ設定
Recallとは
Recallは、PCの画面を定期的にスナップショットとして記録し、自然言語で過去の作業内容を検索できるCopilot+ PC専用の機能です。「先週見たあのグラフ」「3日前に読んだメールの内容」といった曖昧な記憶から、過去の画面を呼び出せます。
企業環境でのリスク
Recallは業務効率を大幅に向上させる一方、セキュリティ上の懸念があります。
画面のスナップショットには、メールの内容、チャットのやり取り、機密文書の内容、パスワード入力画面などが含まれる可能性があります。デバイスが盗難に遭った場合や、マルウェアに感染した場合に、Recallのデータが流出するリスクがあります。
推奨設定
企業環境では、以下の設定を推奨します。
第一に、Recallの有効化は慎重に判断してください。全社一律で有効にするのではなく、まずはパイロットグループ(IT部門等)で試行し、リスクと効果を評価してから展開範囲を広げましょう。
第二に、IntuneのポリシーでRecallの設定を一元管理してください。スナップショットの保存期間(デフォルトは無制限)を短縮する、特定のアプリ(パスワードマネージャー、金融系アプリ等)をスナップショット対象から除外する、BitLocker暗号化を必須にする、といった設定が可能です。
第三に、Recallのデータは端末ローカルに保存され、クラウドには送信されません。この点は安心材料ですが、デバイスの暗号化(BitLocker)が無効な場合、ローカルデータへの物理アクセスリスクがあるため、必ずBitLockerを有効にしてください。
コスト試算
端末コスト
Copilot+ PCの法人向けモデルは、概ね15〜25万円(税別)の価格帯です。NPU非搭載の通常モデルとの価格差は2〜5万円程度です。3〜5年のライフサイクルで考えると、AI機能による業務効率化の効果を考慮すれば、十分な投資対効果が見込めます。
ライセンスコスト
Copilot+ PCのAI機能の一部はWindows 11に標準搭載されていますが、Microsoft 365 Copilotのフル機能を利用するには、別途Copilotライセンス(1ユーザーあたり月額$30)が必要です。端末入替えとCopilotライセンスのセット導入を検討する場合は、ライセンスコストも含めた試算を行ってください。
導入ロードマップ
Phase 1:評価(1〜2か月)
パイロット機を2〜3台調達し、IT部門内で検証します。既存アプリの互換性テスト、Autopilotキッティングの動作確認、Recall機能のセキュリティ評価を実施してください。
Phase 2:パイロット展開(1〜2か月)
特定の部署(10〜20名程度)に先行展開します。ユーザーからのフィードバックを収集し、Intuneポリシーの調整、サポート体制の確認を行います。
Phase 3:全社展開(3〜6か月)
パイロットの結果を踏まえ、全社への展開計画を策定します。メーカーとの一括購入交渉、Autopilotによるゼロタッチキッティング、旧端末の回収・データ消去を並行して進めます。
まとめ
2026年度のPC入替えは、単なるハードウェアの更新ではなく、AI活用の基盤を整備する戦略的な投資です。プロセッサの互換性、Recall機能のセキュリティ、Intune展開の設計を事前に検討し、計画的な導入を進めてください。
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→ Windows Autopilotの解説記事はこちら → Windows 10 ESU vs Windows 11移行の比較 → PC ライフサイクル管理の解説