Gemini Enterprise(旧Agentspace)とは? Google WorkspaceのGeminiと何が違うのか——追加契約すべきかの判断ガイド
「Google WorkspaceにGeminiが入っているのに、別に『Gemini Enterprise』という製品がある。何が違うのか」——2025年10月にGoogleがGemini Enterpriseを発表して以来、GWSを使う企業から最も多く受ける質問です。
紛らわしいことに、GoogleのAI製品は「Gemini(コンシューマーアプリ)」「Google WorkspaceのGemini(プラン標準搭載)」「Gemini Enterprise(旧Agentspace、Google Cloudの企業向けAIプラットフォーム)」と、同じ名前で別レイヤーの製品が並んでいます。
この記事では、GWSユーザーの視点でGemini Enterpriseの正体と料金を整理し、「追加契約する価値があるのはどんな企業か」を判断できるようにします。
まず整理:3つの「Gemini」
| 何か | 費用 | |
|---|---|---|
| Geminiアプリ | 個人向けAIチャット(gemini.google.com) | 無料〜個人サブスク |
| Google WorkspaceのGemini | GmailやドキュメントなどGWSアプリに組み込まれたAI機能+業務用Geminiチャット | GWSプランに標準バンドル(2025年の料金改定以降) |
| Gemini Enterprise | Google Cloudが提供する企業向けAIエージェント・プラットフォーム(旧Agentspace) | 別契約(シート課金+従量課金) |
ポイントは、2025年初頭の料金改定で従来月額20〜30ドルだったGeminiアドオンが廃止され、Business/EnterpriseプランにAI機能が標準搭載されたことです。つまりGWSユーザーは、追加費用なしで「Gmailの下書き生成」「ドキュメントの要約」「NotebookLM」「Gemini チャット」を使えています。
では、その上でGemini Enterpriseは何を足すものなのか。
Gemini Enterpriseとは——「全社AIの玄関口」
Gemini Enterpriseは、2025年10月にGoogleが発表した企業向けAIプラットフォームです。前身は「Google Agentspace」という製品で、これにNotebookLM EnterpriseやCustomer Engagement Suite等を統合し、ブランドを一本化したものです。
GWS標準のGeminiとの本質的な違いは、守備範囲です。
違い1:社内データの横断検索(GWSの外側もつなぐ)
GWS標準のGeminiが参照できるのは、基本的にGoogle Workspace内のデータ(メール、ドライブ、カレンダー等)です。
Gemini Enterpriseはコネクタを通じて社外システムを接続できます。Salesforce、SAP、ServiceNow、Confluence、Jira、SharePoint/Microsoft 365など、社内に散在するデータソースを横断して「会社の情報すべてに聞ける検索・チャット」を構築できます。M365とGWSが混在する企業や、基幹システム・SaaSが多い企業ほど価値が出る構造です。
違い2:カスタムAIエージェントの構築・配布基盤
ノーコードでエージェントを作るAgent Designer、Googleや サードパーティ製の事前構築エージェント、A2A(Agent2Agent)プロトコルによるエージェント間連携など、「組織として」AIエージェントを開発・配布・管理するための基盤が提供されます。GWS内の自動化エージェント基盤であるWorkspace StudioがGWS内の業務フロー向けであるのに対し、Gemini Enterpriseは全社システム横断・本格開発まで視野に入るレイヤーです。
違い3:ガバナンスと監査の中央管理
誰がどのエージェントを使い、どのデータソースにアクセスしたかの可視化・権限管理を中央で行えます。AI活用が部署単位で乱立し始めた企業の「統治レイヤー」としての役割です。
参考: Gemini Enterprise - Google Cloud
料金体系——シート課金+エージェント実行の従量課金
Gemini Enterpriseの料金は2階建てです(2026年6月時点、米ドル)。
シート課金(エディション別)
| エディション | 月額/ユーザー(年契約) | 想定 |
|---|---|---|
| Business | $21〜 | 小規模チーム向けのエントリー |
| Standard | $30(月契約は$35) | 本格利用の標準 |
| Plus | $50(月契約は$60) | 高度なセキュリティ・大規模向け |
エージェント実行の従量課金
2026年2月11日から、エージェント実行基盤(Agent Platform)のコンピュート従量課金が始まっています(コード実行・セッション・Memory Bank等。月間の無料枠あり)。カスタムエージェントを本格運用するほどシート料金に上乗せされていく構造であり、「1ユーザーいくら」だけで予算を組むと見積もりを外す点に注意してください。
GWS標準のGemini(追加費用なし)と比べると、Gemini Enterpriseは1ユーザーあたり年間4〜9万円規模の追加投資になります。
中小企業は契約すべきか——判断基準
多くのGWS中小企業には「まだ不要」
結論から言うと、GWS単独で業務が回っている中小企業に、Gemini Enterpriseは現時点では不要なケースが大半です。理由は単純で、標準搭載のGeminiでカバーされる領域が十分広いからです。
- メール・文書・会議のAI支援 → GWS標準のGeminiで可能
- 社内ドキュメントへの質問応答 → NotebookLM(活用ガイドはこちら)やGemsで可能
- GWS内の業務自動化 → Workspace Studioで追加費用なしで可能
まず標準機能を使い倒し、明確な不足が見えてから上位レイヤーを検討する順番が健全です。
検討する価値があるのはこんな企業
- M365とGWSの混在環境で、SharePointやTeamsのデータも含めた横断検索をしたい
- Salesforce・kintone・基幹システムなどデータソースが多く、「社内の情報がどこにあるか分からない」が経営課題になっている
- 複数部署が独自のAIエージェントを作りたがっており、野良AI乱立を統治する基盤が必要になってきた
- 数百名規模以上で、AI活用を全社プラットフォームとして整備するフェーズに入った
逆に言えば、Gemini Enterpriseは「AIを使い始める」ためのツールではなく、AI活用が組織に広がった後の、統合と統治のためのツールと理解するのが正確です。
GWSエディションとの関係にも注意
GWS側のエディション(Business Starter〜Enterprise Plus)によって標準Geminiの利用上限や機能に差があります。Gemini Enterpriseを足す前に、まずGWSのBusinessとEnterpriseの違いを確認し、GWS側のアップグレードで足りるケースでないかを先に検証しましょう。
まとめ
- Gemini Enterpriseは旧Agentspaceを統合したGoogle Cloudの企業向けAIプラットフォームであり、GWSに標準搭載されたGeminiとは別契約・別レイヤーの製品
- 価値の中心は「社外システムも含めた社内データの横断検索」「カスタムエージェントの構築・配布基盤」「全社AIのガバナンス」の3つ
- 料金はシート課金($21〜60/ユーザー/月)+2026年2月開始のエージェント実行従量課金の2階建て
- GWS単独で回っている中小企業は、まず標準Gemini・NotebookLM・Workspace Studioを使い倒すのが先。Gemini Enterpriseは複数システム横断・AI統治のフェーズで効く製品
- 名前が似ているだけに、ベンダー提案を受ける際は「どのレイヤーのGeminiの話か」を必ず確認する
情シス365では、Google Workspace環境でのAI活用ロードマップの策定(標準Gemini活用→自動化→プラットフォーム整備)を支援しています。「Gemini Enterpriseを提案されたが本当に必要か判断できない」といったセカンドオピニオンのご相談もお受けしています。