A2A(Agent-to-Agent)プロトコルとは?MCPとの違いと企業への影響を解説
A2Aプロトコルとは
A2A(Agent-to-Agent)プロトコルは、Googleが2025年4月に発表したAIエージェント間の通信標準規格です。異なるベンダーが開発したAIエージェント同士が、互いの能力を発見し、タスクを委譲し、結果を受け取るための共通言語を定義しています。
わかりやすく言えば、MCPが「AIとツールをつなぐUSB」だとすると、A2Aは「AI同士をつなぐインターネット」です。MCPは1つのAIが外部ツールを呼び出すための規格ですが、A2Aは複数のAIエージェントが対等な立場で協調するための規格です。
なぜA2Aが必要なのか
AIエージェントの「サイロ化」問題
企業のIT環境では、すでに複数のAIエージェントが動き始めています。Microsoft 365のCopilot、Google WorkspaceのGemini、Salesforceの Einstein、ServiceNowのNow Assist。これらはそれぞれ独自のエコシステム内で動作し、他のエージェントと連携する標準的な方法がありません。
例えば「Salesforceの商談データをもとに、Microsoft 365のCopilotで提案書を作成し、Google Workspaceで顧客にメールする」というワークフローは、現状では人間が各ツールを行き来して橋渡しする必要があります。
A2Aが目指すのは、この「AIエージェントのサイロ化」を解消し、エージェント同士が直接やり取りできる世界です。
エンタープライズの現実的な要件
A2Aプロトコルは、企業利用を強く意識して設計されています。エージェント間通信はHTTPS上で行われ、OAuth 2.0による認証、OpenID Connectによるアイデンティティ連携が組み込まれています。エージェントが「何ができるか」を記述するAgent Cardは、JSON形式で公開され、他のエージェントはこれを読んで連携先の能力を自動的に発見します。
MCPとA2Aの違い
MCPの役割:AIとツールの接続
MCP(Model Context Protocol)はAnthropicが開発した規格で、AIモデルが外部ツール・データソースを呼び出すためのインターフェースを定義します。MCPでは「クライアント(AI)」と「サーバー(ツール)」の関係が明確で、AIが主体的にツールを呼び出す一方向の構造です。
MCPの典型的なユースケースは、AIがGmailを検索する、AIがデータベースにクエリを投げる、AIがSlackにメッセージを送る、といった「AI→ツール」の操作です。
A2Aの役割:AIエージェント同士の協調
A2Aは、AIエージェント同士が対等な立場でやり取りするための規格です。あるエージェントが別のエージェントにタスクを依頼し、進捗を確認し、結果を受け取る。依頼を受けたエージェントも、必要に応じて質問を返したり、部分的な結果を段階的に返したりできます。
A2Aの典型的なユースケースは、採用AIエージェントが候補者情報を面接スケジューリングAIエージェントに渡す、営業AIエージェントが法務レビューAIエージェントに契約書チェックを依頼する、といった「AI↔AI」の双方向のやり取りです。
補完関係にある2つの規格
MCPとA2Aは競合する規格ではなく、補完関係にあります。
MCPはエージェントの「手足」を拡張します。エージェントがツールやデータにアクセスする能力を標準化します。A2Aはエージェントの「社会性」を拡張します。エージェント同士が協調してタスクを遂行する能力を標準化します。
実際の企業環境では、個々のエージェントがMCPで各種ツールと連携しつつ、エージェント同士はA2Aで協調する、という二層構造になると予想されます。
| 比較項目 | MCP | A2A |
|---|---|---|
| 開発元 | Anthropic | |
| 主な用途 | AIとツールの接続 | AIエージェント間の連携 |
| 通信の構造 | クライアント→サーバー(一方向) | エージェント↔エージェント(双方向) |
| 認証方式 | サーバー依存 | OAuth 2.0 / OpenID Connect |
| エージェント発見 | なし(手動設定) | Agent Card による自動発見 |
| 長時間タスク | 非対応 | 対応(進捗通知、段階的結果) |
| 関係性 | 上下関係(AI>ツール) | 対等(エージェント=エージェント) |
企業のIT環境への影響
短期的な影響(今〜半年)
現時点でA2Aは仕様策定の段階であり、プロダクション環境で使える製品はまだ限られています。ただし、Google、Salesforce、SAP、ServiceNow、Atlassianなど50社以上がA2Aのサポートを表明しており、エンタープライズ向け製品への組み込みは急速に進むと見られます。
情シス担当者が今やるべきことは、自社で利用しているSaaS・AIツールがA2A対応を予定しているかをウォッチすることです。各ベンダーのロードマップを確認し、A2A対応がアナウンスされた場合にどのような変化が起きるかを想定しておきましょう。
中期的な影響(半年〜2年)
A2A対応製品が増えると、「AIエージェント間のワークフロー自動化」が現実になります。現在、人間が行っている「あのツールのデータをこのツールに転記する」「あの部署に確認して結果をこちらに反映する」といった橋渡し作業が、エージェント間の直接通信に置き換わる可能性があります。
これは情シスの業務を減らす一方で、新たな課題も生みます。エージェント間通信のアクセス制御(どのエージェントがどのエージェントにタスクを委譲できるか)、データガバナンス(エージェント間でやり取りされるデータの範囲をどう制御するか)、監査ログ(エージェント間のやり取りをどう記録・追跡するか)といった課題です。
情シスが準備すべきこと
A2Aの普及に備えて、以下の3点を準備することを推奨します。
第一に、エージェント台帳の整備です。自社で利用しているAIエージェント(Copilot、Gemini、各SaaSの組み込みAI等)を棚卸しし、一覧化しておきましょう。
第二に、認証基盤の整備です。A2AはOAuth 2.0とOpenID Connectを前提としています。Entra IDやGoogle Workspaceの認証基盤がA2Aのエージェント認証に対応できるよう、SSO環境を整えておくことが重要です。
第三に、データ分類の明確化です。エージェント間でやり取りしてよいデータとそうでないデータの分類基準を、今のうちに策定しておきましょう。
まとめ
A2Aプロトコルは、AIエージェント同士が協調するための新しい標準規格です。MCPが「AIとツールの接続」を標準化するのに対し、A2Aは「AI同士の連携」を標準化します。両者は競合ではなく補完関係にあり、企業のIT環境では二層構造で機能することになるでしょう。
現時点で具体的な製品導入の判断は不要ですが、認証基盤の整備やデータ分類の策定など、A2A時代に備えた土台づくりを今から始めることを推奨します。
情シス365では、AIエージェント導入に伴うIT環境の設計・運用を支援しています。お気軽にご相談ください。