Pマーク取得 vs SECURITY ACTION ― 中小企業にとって最適なセキュリティ認証は?
「セキュリティの認証を取りたいが、Pマーク・ISMS・SECURITY ACTIONのどれを選べばいいか分からない」という声をよく聞きます。特にIT専任者がいない中小企業にとっては、費用対効果の見極めが重要です。
本記事では、中小企業が現実的に選択しやすいPマークとSECURITY ACTIONの2つに焦点を当て、比較します。
基本情報の比較
SECURITY ACTION
IPAが推進する自己宣言制度です。第三者審査はなく、自社でセキュリティ対策に取り組むことを宣言します。一つ星と二つ星の2段階があります。費用は無料、申請もオンラインで即日完了します。
IT導入補助金の申請要件に「SECURITY ACTION宣言済み」が含まれており、実利的なメリットがあります。
Pマーク(プライバシーマーク)
一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)が運営する認証制度です。個人情報の取り扱いに関するマネジメントシステム(JIS Q 15001)に基づき、第三者機関の審査を受けます。
取得費用は中小企業で100〜300万円程度、期間は6ヶ月〜1年が一般的です。2年ごとの更新審査が必要です。
比較表
費用面ではSECURITY ACTIONが無料であるのに対し、Pマークは取得に100〜300万円、更新に50〜100万円かかります。対象範囲はSECURITY ACTIONが情報セキュリティ全般、Pマークは個人情報に特化しています。
取引先への信頼度では、Pマークは第三者審査を経ているため高い信頼性があります。SECURITY ACTIONは自己宣言のため信頼度は限定的ですが、「何もしていない」企業との差別化には有効です。
Pマークの費用は「見積書に出ない部分」が大きい
金額の幅が広いのは、構成要素が3つあり、そのうち1つが見積書に現れないためです。
| 費目 | 内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| 審査機関に払う費用 | 申請料・審査料・付与登録料 | 事業者規模で定められている。JIPDECの公式サイトで確認できる |
| コンサル費用 | 文書作成、内部監査、審査対応の支援 | 依頼範囲で大きく変動。自社対応なら不要 |
| 社内工数 | 規程整備、教育、記録作成、審査当日の対応 | 見積書に出ないが最も大きい |
見落とされやすいのは3つ目です。 個人情報を扱う全部門にヒアリングし、台帳を作り、教育を実施し、内部監査の記録を残す作業が発生します。IT担当者が兼任で進める場合、通常業務と並行して半年以上かかることを前提にしてください。
審査機関に払う費用は事業者規模で定められています。金額は改定されるため、検討時点でJIPDECの公式サイトを確認してください。 ここでの100〜300万円という幅は、コンサル利用の有無を含んだ一般的な目安です。
取得後も費用と工数は続く
Pマークは取得して終わりではありません。2年ごとの更新審査に加え、毎年の内部監査・教育・見直しが必須です。
- 全従業員への年1回以上の教育と、その受講記録
- 内部監査の実施と是正処置の記録
- 代表者による年1回のマネジメントレビュー
- 個人情報保護管理者・監査責任者の任命(兼任の可否に制約あり)
この継続運用ができるかどうかが、取得可否の実質的な判断基準です。 取得はコンサルの支援で乗り切れても、2年後の更新で記録が揃わず苦労するケースは珍しくありません。
適用範囲(スコープ)の決め方
Pマークは全社が対象です。ISMSのように「この事業部だけ」と範囲を限定することはできません。ここがISMSとの実務上の大きな違いになります。
- Pマーク — 全社が対象。個人情報に特化。BtoC・人材・EC事業者で求められやすい
- ISMS(ISO 27001) — 範囲を限定できる。情報セキュリティ全般。システム開発や受託業務で求められやすい
取引先から「認証を取ってほしい」と言われた場合、どちらを想定しているかを必ず確認してください。 個人情報を預ける取引ならPマーク、システムやデータの受託ならISMSを求めているのが一般的です。取り違えると、費用をかけて取得したのに要件を満たさないことになります。
「取引先に求められた」ときの現実的な対応
認証取得には最短でも半年かかります。取引の開始時期に間に合わないことがほとんどです。その場合は次の順で交渉してください。
- 求められている内容を具体的に確認する — 「Pマーク」ではなく「個人情報の管理体制の説明」で足りる場合があります
- 代替の提示 — SECURITY ACTION二つ星の宣言、情報セキュリティ基本方針の提出、チェックシートへの回答で通ることは多くあります
- 取得の計画を示す — 「◯年◯月までに取得予定」と工程を提示すると、条件付きで進む場合があります
先方の担当者も「規程だから聞いている」ことが多く、代替手段で合意できる余地があります。 いきなり取得を決める前に、確認する価値があります。
SECURITY ACTIONの限界を理解しておく
無料で即日という手軽さの一方、自己宣言であるため、第三者への証明力は限定的です。
- 取引先の審査で「認証」として扱われないことがある
- 宣言しただけで対策が実態を伴わない企業も存在するため、相手の評価も割り引かれる
- 個人情報の管理体制そのものを保証するものではない
一方で、IT導入補助金の申請要件になっている点は実利的です。補助金を使ってツールを導入する予定があるなら、宣言しておく理由が明確にあります。
中小企業の判断基準
Pマークが適しているケース: BtoC事業で大量の個人情報を扱う企業、人材紹介・マーケティング・EC事業者、取引先からPマーク取得を求められている企業。
SECURITY ACTIONが適しているケース: まずはコストをかけずにセキュリティ対策を始めたい企業、IT導入補助金を活用したい企業、BtoB中心で個人情報の取り扱いが少ない企業。
両方活用するアプローチ: まずSECURITY ACTION二つ星で基盤を固め、事業の成長に伴ってPマークやISMSにステップアップするのが最も現実的です。
SECURITY ACTION二つ星の取り組み内容
二つ星の宣言には、IPAの「5分でできる!情報セキュリティ自社診断」の実施と、情報セキュリティ基本方針の策定が必要です。自社診断は25項目のチェックリストで、OSの更新、パスワード管理、バックアップなど基本的な対策状況を確認します。
これらの取り組みは、Pマーク取得の前段階としても有効です。SECURITY ACTIONで整備した基盤の上にPマークの要件を積み上げることで、効率的に認証取得を進められます。
自社診断は、実態のまま回答してください。 「できている」に丸を付けて宣言だけ済ませると、後でPマークやISMSに進む際、どこから手を付けるべきかが分からなくなります。診断の価値は宣言の資格ではなく、不足の可視化にあります。
判断の順序
- IT導入補助金を使う予定があるか → あるなら SECURITY ACTION は必須要件。まず宣言する
- 取引先から具体的に求められているか → 求められている中身を確認する。Pマークなのか ISMS なのか、代替で足りるのか
- 大量の個人情報を扱うか → BtoC・人材・ECならPマークの検討価値が高い
- 継続運用の担当を置けるか → 教育・内部監査・記録を毎年回せる体制がないなら、取得は時期尚早
4番目で止まる企業が多くあります。 その場合は、SECURITY ACTION二つ星で基本方針と自社診断を整え、日常のセキュリティ運用(チェックリスト20項目)を先に固めるほうが、費用対効果は高くなります。
まとめ
- Pマークの費用は審査機関への費用・コンサル費用・社内工数の3構成。3つ目は見積書に出ないが最大
- 審査機関の料金は事業者規模で決まる。改定されるため検討時点でJIPDECの公式サイトを確認する
- 取得後も2年ごとの更新+毎年の教育・内部監査・マネジメントレビューが続く
- 継続運用ができるかが実質的な判断基準。取得は支援で乗り切れても更新でつまずく
- Pマークは全社が対象で範囲を限定できない。範囲を絞れるISMSとの違いに注意
- 取引先の要請はPマークかISMSかを必ず確認する。取り違えると要件を満たさない
- 認証は最短でも半年。代替(SECURITY ACTION、基本方針、チェックシート回答)で合意できる余地がある
- SECURITY ACTIONは自己宣言のため第三者への証明力は限定的。ただしIT導入補助金の要件になる
- 自社診断は実態のまま回答する。価値は宣言の資格ではなく不足の可視化にある
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