Google Driveがぐちゃぐちゃになる原因と対策|会社としての使い方を「共有ドライブ中心」に組み直す手順

「Google Driveのどこに何があるか分からない」「同じ資料が3つあって、どれが最新か分からない」「辞めた人のファイルが開けなくなった」。Google Workspace を使っている中小企業から、必ずと言ってよいほど聞く相談です。

多くの会社がこれを「社員の整理が下手だから」と考え、フォルダの整理を呼びかけます。しかし数か月後には元に戻ります。原因は個人の整理能力ではなく、会社のファイルを「マイドライブ」に置く設計そのものにあるからです。

本記事では、まず「マイドライブ」「共有ドライブ」「共有アイテム」の3つの違いを整理し、次に Google Drive が散らかる仕組みを5つの症状から説明し、そのうえで会社としてどう使うべきかを、フォルダ設計・命名・権限・退職者・外部共有・運用の順で示します。共有設定と情報漏えい対策そのものはGoogle Driveの共有設計|情報漏洩を防ぐ権限管理で扱っているので、本記事は「整理と統制」に絞ります。

まず用語を揃える:マイドライブ・共有ドライブ・共有アイテム

Google Drive の左側のメニューには「マイドライブ」「共有ドライブ」「共有アイテム」が並んでいます。この3つの性質を理解していないと、どこに置くべきかの判断ができず、どんなルールを作っても守られません。

マイドライブ

自分が作成した、または自分が所有者になっているファイルとフォルダの置き場所です。Google Workspace のアカウント1つに1つあり、Word や Excel でいう「自分のPCのドキュメントフォルダ」に近い存在です。

  • 所有者は個人。ファイルを他人に共有しても、所有権は作成者に残る
  • 容量は個人(または組織のプール)のストレージを消費する
  • アカウントを削除すると、中のファイルは削除される(事前に所有権を移せば残せる)
  • 他人に共有すると、相手の「共有アイテム」に表示される。相手にはフォルダ構造は見えない

向いているのは、個人の作業中ファイル、下書き、自分専用のメモ、社外の個人から受け取った一時ファイルです。

共有ドライブ

チームや部門が共同で持つ置き場所で、ファイルの所有者は個人ではなく共有ドライブそのもの(組織)です。以前は「チームドライブ」と呼ばれていました。

  • 所有者は組織。作成した人が退職しても、異動しても、ファイルは共有ドライブに残る
  • メンバーと役割(管理者・コンテンツ管理者・投稿者・閲覧者など)を共有ドライブ単位で管理する。中のファイルは原則としてメンバー全員に同じ権限で見える
  • 全員が同じフォルダ構造を見る。「共有アイテム」のような個人ごとの見え方の違いがない
  • 管理コンソールから一覧・監査・メンバー管理ができる
  • 利用できるのは Business Standard 以上のプラン(Business Starter では作成できない)

向いているのは、会社の成果物、部門や案件のファイル、2人以上が使うファイル、自分が辞めた後も会社に必要なファイルです。

共有アイテム

ここが誤解の最も多い場所です。「共有アイテム」は保存場所ではなく、「他人のマイドライブにあるファイルのうち、自分に共有されたもの」を一覧表示しているビューです。

  • 中のファイルの実体は、共有してくれた人のマイドライブにある。自分は所有者ではない
  • 共有された順に並び、共有元のフォルダ構造は反映されない。相手が「営業/A社/提案」に置いていても、自分には「提案書.docx」が単体で流れてくる
  • 共有元の人が退職してアカウントが削除されると、ここにあったファイルは消える
  • ここにあるファイルを自分のマイドライブに「整理」しようとすると、ショートカット(実体への参照)か、コピー(別ファイル)のどちらかになる。コピーを作ると、その時点で実体が2つに分かれる

「共有アイテムを整理する」という発想自体が、散らかりの入口です。共有アイテムに会社のファイルが大量に並んでいるなら、それは「会社のファイルがマイドライブ運用になっている」というサインです。

3つの関係を1枚で

マイドライブ共有ドライブ共有アイテム
正体個人の保存場所組織の保存場所他人のマイドライブのファイルを見るビュー
ファイルの所有者自分組織(共有ドライブ)共有してくれた他人
退職・削除時消える残る共有元が消えれば消える
フォルダ構造自分で作る全員に同じ構造なし(時系列の一覧)
会社のファイルの置き場所として不適置き場所ではない

結論:マイドライブ中心をやめ、共有ドライブ中心に組み直す

前節の表が示すとおり、会社のファイルの置き場所として成立するのは共有ドライブだけです。権限の付け方(マイドライブはファイルごとに個人が設定、共有ドライブはメンバーと役割で一括管理)と、管理者からの見え方(マイドライブは個人ごとに分断、共有ドライブは管理コンソールで一覧・監査できる)の差も、この結論を後押しします。

散らかる会社は、ほぼ例外なく会社のファイルをマイドライブに置き、個人間の共有でやり取りしています。これを、会社のファイルは共有ドライブに置き、マイドライブは個人の作業場に限定する形へ変えることが、対策のすべての土台です。

なぜぐちゃぐちゃになるのか:5つの症状と原因

症状1:どこに何があるか分からない

マイドライブに置かれたファイルを他人に共有すると、受け取った側には「共有アイテム」に時系列で流れ込みます。ここにはフォルダ構造がありません。作った人がきれいにフォルダ分けしていても、受け取る側にはファイルの山が届くだけです。

さらに、受け取った人が「共有アイテム」から自分のマイドライブにショートカットや整理用フォルダを作ると、同じファイルへの入口が人ごとに違う場所にでき、「Aさんは営業フォルダの中、Bさんは共有アイテムの中」という状態になります。全員が同じ構造を見る場所が存在しないことが、迷子の根本原因です。

症状2:同じファイルが何個もある

「共有アイテム」から探すのが面倒なので、社員はファイルをコピーして自分のマイドライブに置きます。メールに添付されたファイルを Drive に保存する人もいます。こうして同じ資料のコピーが人数分でき、それぞれが別々に編集されて、どれが最新か分からなくなります。

Google ドキュメントやスプレッドシートは「同時編集できる1つの実体」が強みですが、コピーが増えた時点でその強みは消えます。

症状3:辞めた人のファイルが開けない・消えた

マイドライブのファイルの所有者は個人です。アカウントを削除すると、そのファイルは削除されます。 事前に所有権を移す手順はありますが、退職時のIT処理の中で忘れられがちで、数か月後に「あの見積書はどこ?」となって初めて気づきます。

削除まで行かなくても、退職者アカウントを停止した時点で、そのファイルへの共有リンクは開けなくなります。共有ドライブなら、メンバーが抜けてもファイルは共有ドライブの所有物として残ります。

症状4:権限が誰にも分からない

マイドライブのファイル共有は、ファイルやフォルダごとに「誰に・どの権限で」を個人が設定します。数年経つと、退職者、取引先、前の担当者、個人の Gmail アドレスが権限リストに残り、誰も全体を把握できなくなります。「リンクを知っている全員が閲覧可」で共有されたファイルが、検索エンジンやAIアシスタントから見える場所に置かれていた、という事故もここから起きます。

管理者が「この案件フォルダに誰がアクセスできるか」を答えられない状態は、取引先のセキュリティチェックシートでは「アクセス権の定期棚卸しをしていない」に該当します。

症状5:ルールが決まっていないので、人が変わると崩れる

フォルダの切り方、ファイル名の付け方、どこまで共有してよいかが会社として決まっていないと、担当者が変わるたびに流儀が変わります。前任者が作った構造の上に後任者が別の構造を重ね、地層のようになります。整理を呼びかけても、「正しい状態」が定義されていないので、戻す先がないのです。

会社としての使い方:決めるべき6つのこと

1. 共有ドライブの切り方を決める

共有ドライブは「1つの権限セットで管理する単位」です。切り方の基本は部門×機密度です。

共有ドライブの例メンバー用途
全社共有全社員(閲覧者中心)就業規則、社内手続き、テンプレート、社内報
営業営業部門提案書、見積、顧客別フォルダ
営業・契約書営業管理職+管理部門締結済み契約書(機密度が高いので分ける)
管理・経理管理部門決算、給与、請求
管理・人事機密人事責任者のみ評価、労務、個人情報
案件_〇〇プロジェクト部門横断のメンバー期間限定の大型案件。終了後はアーカイブへ
アーカイブ管理者+閲覧者過去年度の完了案件。閲覧のみ

ポイントは3つです。部門の中で機密度が違うものは、フォルダで分けずに共有ドライブを分ける(権限はフォルダ単位でも制限できますが、共有ドライブ単位のほうが事故が少ない)。部門横断の案件は専用の共有ドライブを作り、終わったらアーカイブへ移す。そして共有ドライブの数は多くてよい。「共有ドライブが増えると散らかる」と心配されますが、1つの巨大な共有ドライブに全部入れるほうが権限管理が破綻します。目安として従業員50人なら10〜20個、100人なら20〜40個程度になります。

なお、共有ドライブ1つに入れられるアイテム数やフォルダの階層には上限があるため、全社で1つに寄せる設計は上限の面でも無理があります。

2. フォルダ構成を3階層までに決める

共有ドライブの中は、第1階層を固定し、第2階層まではルール化、第3階層以下は担当者の裁量にします。深い階層は迷子の原因なので、目安は3〜4階層までです。

営業共有ドライブの例:

営業/
├── 01_顧客別/
│   ├── A社/
│   │   ├── 提案/
│   │   ├── 見積/
│   │   └── 議事録/
│   └── B社/
├── 02_提案書テンプレート/
├── 03_製品資料/
└── 09_その他/

第1階層に番号を付けるのは、並び順を固定するためです。「その他」を最後に置き、ここに溜まったものを月に一度見直します。

3. ファイル名のルールを決める

決めるのは最低限で構いません。日付・内容・版の3要素と、日付の書式だけ揃えます。

  • 日付は先頭に YYYYMMDD(例: 20260920_A社_提案書_v2
  • 「最新」「final」「修正版」という言葉は使わない。版は v1v2 で表す
  • Google ドキュメント・スプレッドシートは版管理機能があるので、原則1ファイルを更新し続ける。コピーして版を作らない

これだけで、検索したときに同名ファイルが並んでも見分けがつくようになります。

4. 権限の付け方を決める

共有ドライブの権限は、個人ではなく Google グループに付けるのが基本です。「営業部グループ」を共有ドライブのメンバーにしておけば、入退社や異動はグループのメンバー変更だけで済み、共有ドライブ側は触りません。

役割は次の使い分けにします。

  • 管理者: 情シスまたは部門長のみ。メンバー管理と共有ドライブの設定ができる
  • コンテンツ管理者: 部門の実務担当。ファイルの追加・編集・移動・削除ができる
  • 投稿者 / 閲覧者(コメント可)/ 閲覧者: 他部門や関係者

そして個別ファイルの共有は例外扱いにします。「このファイルだけ他部門の人に見せたい」場合は、その人を該当フォルダの閲覧者にするか、案件共有ドライブへ移すことを優先し、ファイル単位の共有は期限付きにします。

外部共有については、共有ドライブごとに「外部ユーザーをメンバーにできるか」「共有ドライブ外のユーザーに共有できるか」「ダウンロード・印刷・コピーを許可するか」を設定できます。管理・人事系の共有ドライブは外部共有を無効にし、営業系は許可、といった使い分けをします。組織部門(OU)単位での既定値の設計は組織部門(OU)設計を参照してください。

5. 退職者のデータの扱いを決める

共有ドライブ中心にしていれば、退職者のファイルの大半は共有ドライブに残っています。それでもマイドライブに残る作業中ファイルはあるので、退職時の手順に次を入れます。

  1. 退職日までに、本人が業務に関わるファイルを共有ドライブへ移動する(本人が所有者なので移動できる)
  2. 退職後、管理コンソールの「データの移行」で、残ったマイドライブのファイルを後任または部門長へ所有権移行する
  3. 移行が終わってからアカウントを削除する。すぐ削除せず、一定期間は停止状態で置く

Gmail やカレンダーも含めてデータを保全したい場合は、AU(アーカイブユーザー)ライセンスを使う選択肢もあります。退職者処理の全体は退職者のIT処理チェックリストにまとめています。

6. 定着させる運用を決める

設計しても、運用がなければ半年で崩れます。最低限、次の3つを回します。

  • 月次: 各共有ドライブの「その他」フォルダと、共有ドライブ外に置かれた会社ファイル(管理コンソールのレポートで、外部共有や「リンクを知っている全員」の共有を確認できる)を見直す
  • 四半期: 共有ドライブごとのメンバーと役割を部門長が確認する。退職者・異動者・取引先の残存を消す
  • 年次: 終了した案件共有ドライブをアーカイブへ移し、閲覧のみにする。フォルダ構成のルールを見直す

新入社員には、入社時の説明で「会社のファイルは共有ドライブに作る。マイドライブは自分の作業場」の1行を必ず伝えます。定着のための教育の進め方はGoogle Workspaceを社内に定着させる方法を参照してください。

今ある散らかった状態からの移行手順

既にマイドライブに会社のファイルが散在している会社が、上の設計へ移るには、次の順で進めます。整理しながら移そうとすると終わらないので、移してから整理するのが原則です。

  1. 現状把握(1週間)。管理コンソールのレポートで、ユーザーごとのストレージ使用量、外部共有されているファイル数、「リンクを知っている全員」で共有されているファイルを把握する。所有者が退職者になっているファイルもここで洗い出す
  2. 共有ドライブの設計(1〜2週間)。前節の表を元に、部門長と一緒に共有ドライブの一覧、メンバーとなるグループ、第1・第2階層を決める。ここは情シスだけで決めない
  3. 進行中の案件だけ先に移す(2〜4週間)。各部門で「今動いている案件・今年度のファイル」だけを新しい共有ドライブへ移動する。所有者本人が移動するのが最も確実
  4. 過去分はアーカイブへまとめて移す。年度単位でフォルダを作り、整理せずに移す。閲覧のみにして、必要になったものだけ現行の共有ドライブへ引き上げる
  5. マイドライブに残ったものは、一定期間後に本人の判断で削除または移動。「〇月〇日以降、マイドライブ内の会社ファイルは会社として管理対象外」と宣言する
  6. 共有設定の既定値を締める。組織部門ごとに、外部共有の既定、「リンクを知っている全員」の許可、共有ドライブの作成権限を設定する

ファイルサーバーから Google Drive へ移行する場合の設計と手順はファイルサーバー更改・クラウド移行ガイド、Microsoft 365 側で同じ問題に向き合う場合はOneDriveとSharePointの違いを参照してください。ストレージ容量の見積もりはM365とGoogle Workspaceのストレージ容量比較にまとめています。

まとめ

  • Google Drive が散らかる原因は個人の整理ではなく、会社のファイルをマイドライブに置く設計にある。所有者が個人、退職で消える、「共有アイテム」に構造がない、コピーが増える、権限が個人ごとに散る
  • 対策の土台は、会社のファイルは共有ドライブ、マイドライブは個人の作業場という線引き
  • 共有ドライブは部門×機密度で切り、数が増えることを恐れない。フォルダは第1・第2階層をルール化し、3〜4階層まで
  • 権限は個人ではなく Google グループに付け、ファイル単位の共有は期限付きの例外にする
  • 退職者のマイドライブは、削除前に所有権を移行する。共有ドライブ中心なら移行対象そのものが減る
  • 月次・四半期・年次の見直しと、入社時の1行の説明で定着させる
  • 既存の散らかりは、移してから整理する。進行中の案件だけ新構成へ、過去分はアーカイブへまとめて

ファイルの置き場所とアクセス権が把握できていない状態は、取引先のセキュリティ確認やSCS評価制度の「情報資産の管理」で問題になります。Google Workspace の共有設定・アカウント・端末・バックアップを含めて現状を棚卸ししたい場合は、IT環境診断で読み取り専用の調査と優先順位付きのロードマップをお渡ししています。共有ドライブの設計と移行そのものは、運用支援の中で対応しています。

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Google Workspaceの管理コンソール運用、アカウントと共有ドライブの設計、Microsoft 365との併用環境の整理まで対応します。

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